十三話
五月二十六日。
擬体を乗せた潜水艇は、タスピモウス海軍総本部がある町、フリンブルの沖まで来ていた。ラフバンでの監視は、これ以上意味がないと切り上げていた。
フリンブルはロワン島ラフバンから定期船が到着する町でもあり、海洋国家タスピモウスの心臓部であった。
そして、南方へ遠く離れた場所で、モニター越しにその光景を見たアンドゥは、感嘆の声を上げた。
「はー、すっげぇ数」
漁船、商船、軍艦、大小合わせて三桁に届かんばかりの船が港と近海には存在していた。
「小国だと舐めていたな。……だが、どこからどこまでが軍の埠頭だ?」
フリンブルの港は広く、漁船ならまだしも、武装商船と軍艦の違いはそんなに明確ではない。海に突き出た埠頭も殆ど等間隔で、人もごちゃごちゃしていて目印になる存在も目立たない。
アンドゥが潜水艇を操る筐体に座り呟くと、
「オプトレアさん。用意ができました。どうぞこちらに」
フィアから声が掛かった。
座ったまま顔を向けると、台の上に何かが投影されていた。
「それは?」
「はい。潜水艇から送られて来たデータを基に、フリンブルの港周辺を立体投影したものです」
アンドゥの喉が鳴る音が響く。筐体から立ち上がり、台に近づくと、半透明に投影されたものが浮き上がっていた。
――もう何が来ても驚かない。
諦念の境地に達した顔をし、フィアの声に耳を傾けるのであった。
「では、この二十三隻が海軍のだと?」
「はい。小舟までは判断しかねますが、この部分に集まる帆船の船体は統一性が高いです」
フィアが投影され映像の一部を囲って言った。
「へー、ここが海軍の埠頭か………………うん?」
アンドゥはある事に気づいた。それは、立体投影された映像をつついてビューや倍率を変えて観察している時に気づいた。
「あの……フィアさん。これ、軍艦の鹵獲――いる?」
アンドゥの疑問は、これ程まで詳細に外部から観測できるんだったら、わざわざ船を鹵獲する必要があるのか? と、言外に匂わす発言であった。
その疑問にフィアはぴしりと固まり、目が泳いでいた。アンドゥはフィアのその態度に真顔になり、見続けると、フィアが観念して口を開いた。
「言い訳をさせてください」
その言葉から始まったフィアの言い訳は、端的に言って、当初の予測より現在の技術水準が低すぎたため、わざわざ船を鹵獲して解析する必要もないという事だった。だが、アンドゥがあり余るやる気を見せるため、言い出せずにいたという事だそうだ。
「もう、フィアさんたら」
「申し訳ありません」
珍しく弱った顔のフィアに、悪戯心が動いたのだろうか、アンドゥはきっぱりと告げる。
「だめっ。ゆるさない」
フィアはますます弱った顔に態度。アンドゥの口角は上がって行っているように見えた。
ひとしきり楽しんだサディス――アンドゥは、
「じゃあ計画を次の段階へ移行しよう」
何事もなかったように、計画を次の段階へ引き上げた。ただ、長時間に渡って弄ばれたフィアは、「もうおよ……」や、「せきに……」など、ぶつぶつと言っていた。
そのフィアの態度にさしものアンドゥも焦り始めた。
――やりすぎた。どうしよ……やっぱり、弱みにつけ込んであんな事やこんな事しなければよかった。
「ご、ごめんなさい、フィアさん」
とりあえず謝る事にしたアンドゥだったが。
「いえ――旦那様」
「はっ? だんなぁ…さまぁ? フィアさん一体何を言ってるんですか?!」
その後。いやいややめてやめて、すったもんだあって、事態が収束するのに、また随分と時間が掛かったとさ。
近隣海域
これまでに判明した地




