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十二話

 場所は第三区画第二格納庫。そこはアンドゥ及びフィアの作業スペースだった。格納庫内にいくつもの箱物が置かれ、擬体システムや様々な機器の製造や保守点検はこの格納庫で行われていた。

 現在、その第二格納庫の一つの箱物の中に、アンドゥとフィアはいた。箱物の、部屋の中には一台の筐体が置かれ、その筐体の中で腰掛けるアンドゥ。両腕はハンドルを握り、画面に向かって手を動かしていた。

 しばらく画面に向かい、ハンドルや他の機器を操作すると、フィアの声にしたがってアンドゥは筐体から出た。


「これで今日の教習課程は終了します」

「ありがとうございました」


 フィアの宣言にアンドゥは頭を下げた。


「どうですか。運転には慣れましたか?」

「うーん、そこそこ。ハンドル操作は慣れたけど、出力の調整に気を取られると岩にあたっちゃう」


 アンドゥはここ数日、潜水艇の操縦教習を受けていた。と言うのも、軍の巡回航路偵察は、地上での徒歩では効率が悪すぎる。そのため、潜水艇で行う事になったのだが、アンドゥは潜水艇を操作した経験はなかった。そのため、潜水艇の運転教習を受けているのだ。

 もちろん、あの潜水艇の事だ、大概の挙動は自動化でき、本来アンドゥが操縦する必要はない。それはフィアも言ったが、アンドゥの船乗りとしての血が騒いだのか、頑なに運転したがり、潜水艇の遠隔操作筐体のシミュレーション機能を使っての練習となったのだ。


 軍の偵察任務の方は、尾行していた軍艦は往復航路だったため、二日で終わり、それからは潜水艇に搭載されたミニマップで、ラフバンの沖から海軍の動きを監視していた。





 アンドゥが運転技術の習熟に勉めている頃、フリンブルの海軍本部には二十隻余りもの船舶が集結していた。

 港では多くの水夫たちが、船と倉庫を往復する光景があちこちで見受けられた。

 その港すぐそばの基地の一室では、二人の男が話していた。


「少将。会議はいかかでしたか?」


 部下の男が、先程会議から部屋に戻って来た上官の男に質問をした。


「駄目だ。全く駄目だ」

「ではやはり」

「ああ。今回の作戦、艦隊司令はラング大佐に決定した」

「艦隊司令官は通常将官が務める事になっているんですがね」

「上はあくまで建前上の作戦で役職を決めている。つまり、今回の作戦、俺はここでお留守番だ」


 少将と呼ばれた上官の男は書類を無造作に机に投げた。


「では、少将付き副官の私もお留守番ですか」


 少し落胆した風の部下の男に、少将は肩に手を置いて言う。


「いいや、お前には行って貰う。今回の作戦、建前と動員数が歪なため丁度いい人材が足らん」


 そう言うと少将は、机に投げた書類から紙を引き抜くと、部下の男に二枚の書類を提示した。


「さてどちらがいい? こちらは艦長補佐職だ。少佐のお前には順当な役回りだな。そしてもう一つは、艦長職だ。作戦の特殊性から階級が足らなくてもねじ込めん事はない」


 少将が提示した問いに迷う事なく少佐は、前者を選んだ。


「ほう。そっちか。理由は何だ?」

「はい。本作戦は陸軍との共同作戦です。建前上は別として、実質我々海軍は彼等の足に体よく使われるだけでしょう。それならわざわざ矢面に立つ必要はない。そう考えます」

「外部との兼ね合いを考えてか。――まあいいだろう。ではそちらで通しておく。作戦開始まであまり日はないが、上手くやれ」


 リュルブッセ諸島にタスピモウスの脅威が到達するまであと少しに迫っていた。





 一方、リュルブッセ諸島の東にあるコーリカム国首都ルーノホトラントのコーリカム国軍本部基地では、会議が行われていた。

 コーリカム国ではタスピモウスのように、軍が陸軍、海軍といったように明確に分けられておらず、将官は総合部(頭脳)、佐官以下は陸部と海部(手足)から成っていた。会議室の同じ卓には陸部と海部から上がって来た将官たちが混ざって座り、下座には、陸部と海部の佐官たちが別れて座っていた。


「報告は以上です」


 末席近くに座る者からの報告が終わると、議題の話し合いに戻った。

 議題は隣国、タスピモウスがリュルブッセ諸島に進軍を計画しているのではと、情報が入った事に対する対処だ。

 コーリカム国とタスピモウスは順調にいっても高速船で四、五日、普通の船だと八日程掛かる距離があった。つまり片方の国の動きが伝わるのにはそれ位時間差があるのだ。


「……その報告では、何とも言えんな」


 出席者の一人の発言で、反応は大きく二つ。


「確かに。タスピモウスで少々大きな資金の流れがあるのは認めても、それが即ちリュルブッセ占拠だとは判断できないな。ただの遠征だろう。当海域に出没する海賊退治なら我等も二、三隻出す。それで釣り合いが取れるだろう」

「何を言う! 入って来た情報だけでもこれ程の流れだ。タスピモウスは今回の事、海賊退治だけで終わるつもりがあるようには思えん。海賊退治を建前に諸島を実効支配を目論んでいるに違いない」


 二人の主張は、この場に集まる者たち姿勢そのもの。片や長年の慣例に従いタスピモウスを牽制しつつ海賊退治を行うだけと、両国の均衡は崩れないと思っている者。片や均衡が崩れると睨み応戦しようと言う者。

 もっとも、緩衝水域に海賊が出るたびに似たような議論は両国で行われ、準定例会のようなものだ。ゆえに多数派は前者が占め、後者も戦う姿勢を取っているだけの者が多く、本当に均衡が崩れると思っている者は極少数だった。


 会議は結局、情報が入るまでいつも通りの対応と、慣例に沿う形で結論が出たのだった。


 こうして、リュルブッセ諸島の覇権はタスピモウスに傾いて行くのだった。




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