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雨のち晴れ、ときどき嵐  作者: 天桜
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――今日もまた、雨が降っていた。


街は色とりどりの傘で染められ、パシャパシャと足音が静かに響く。

鉛のような曇天の空にも関わらず、笑顔で友人と道を通っていく女の人。その様子を眺めていた私は、フードを更に深く被り、顔が見えないようにして溜め息をついた。


私には仲の良い友達はいない。知り合いはいるが時々会釈する程度で、友達というほどではないだろう。

両親も3歳の時に事故で亡くなり、それからは母がたの叔母にお世話になっている。なんの不自由もなく、平穏に、まだ少し遠慮しているが、普通の家族のように過ごせている。



私は毎日、ある場所へ通っている。

古くなり、名前が書いてあるはずの看板は今や何が書いてあるのかわからない。なんとか「神社」というのが読める、住宅街から少し離れた寂れた小さな社。

ここに毎日来ては、お賽銭箱も何も置いていない社の階段に腰をおろし、いつもと変わらぬ空を眺める。


ここの土地柄上、1年中雨が降っているのは当たり前だが、今の時期は気温も高くなりむしむししている。

被っているフードの中も蒸し暑くなっており、髪が首元などに貼りついて気持ちが悪い。

周りに人がいないのを確かめ、フードに手を掛けた時。

「どーも、こんにちは」

「ひっ」

いきなり背後から聞こえた声に、私はフードを深く被った。

いつからいたのだろう。さっきまでいなかったのに……。

「そんな驚かなくても」

「兄ちゃん、いきなり声かけたら驚くに決まってるよ」

「んー、まぁ、星桜の言う通りか。ごめん、大丈夫?」

兄ちゃんと呼ばれた人が私の顔を覗き込もうとする。それをかわし、「大丈夫」と小さな声で呟いた。

「思いきり怖がらせちゃった感じだよねこれ」

「兄ちゃんが悪い」

星桜と呼ばれた女の子は、お兄さんに冷たく言い放つと、私の隣に座る。

「……ねぇ、お姉ちゃん。フード取らないの?ここ、雨当たらないよ?」

「え、えっと……」

確かに、ここで被っている意味はない。だが、どうしても人前でこれは外せない。外したらいけないのだ。

「い、いいの。別に……」

そう言ってフードから手を離すと、私達に向かって風が吹いてきた。冷たい風は私のフードを捲り、顔や髪を露にした。


高く結ばれた白金色の髪、透き通った淡い水色の瞳。そして、真っ白な肌。

そんな私の姿を見てからか、2人は「えっ」と声を出したきり反応がない。

また、なのだろうか。彼らも私を――


私は、みんなと違った。

父も母もみんなと同じで、髪も瞳も黒や茶色だったらしい。

私だけ、髪と肌が真っ白で、瞳は薄い青だった。

だからだろう。私の顔を見るとみんな驚いて、揃って「化け物」だなんだ言って逃げて行くのは。

外国人だと思ってくれた人もいたが、その時もやはり避けられてしまった。

酷い時は、石を投げられ、殴られたこともあった。

叔母たち家族だけが普通に接してくれたが、私が違うことには変わりない。

私は嫌われる。怖がられる。仲良くなりたいのに逃げられる。

彼らも私を化け物と――


「――綺麗」

予想外の言葉に、私は耳を疑った。

綺麗?何が?私が?……それはありえない。

今まで、そんなこと言われたことないのだから。

きっと彼らは風で揺れた何かのことを言ったに違いない。一瞬自分の事ではと思ったことを恥たい。

静かにフードを深く被り直そうとしたら、小さな手に手首を掴まれた。

「お姉ちゃん、フード被るの勿体無いよ。――とっても、綺麗なのに」

星桜ちゃんは無邪気に微笑み、私の目を見つめて優しくそう言った。

するとお兄さんも小さな声で

「うん。……とっても綺麗」

と言い、真っ赤になった顔を反らした。

私はとても嬉しくて、でもそんなこと初めて言われて恥ずかしくて戸惑ってしまう。顔が熱くなる。

「そ、そんな訳……っ。みんな、私見て怖がるのに」

「そんなのおかしいよ!お姉ちゃんは白くって、雪みたいだもん!!雪みたいに綺麗なのっ!!」

「雪……?」

「うんっ!!」

そんな風に思ってくれる人もいるんだ。私と、普通に接してくれるんだ。

すると、頬に暖かいものが伝った。

「え、な、なんで泣くの!?俺と星桜がなんか嫌なこと言った!?」

「ううん……ううん。嬉しいの。ありがとう!」

思えば、久しぶりに笑った気がする。ちゃんと笑えてたのかわからないが、2人も私に笑顔を向けてくれた。それがまた嬉しくて、笑いながら泣いた。


「ねぇ、明日ここで一緒に遊ぼ!」

星桜ちゃんが笑顔で言った。私達は笑顔で約束をする。

「あ、そうだ。名前!俺は陽希。こっちが妹の星桜」

「私は雨音。よろしくね!」

2人と別れた私は、初めてした明日の約束に胸を弾ませて家に帰った。




――空には、初めて見る綺麗な虹が架かっていた。


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