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ARK  作者: 星河 翼
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#4 A REUNION

▼A REUNION▼


「この世は『ビッグバン』が姶まってからと言うもの、この広がりつつある宇宙を遠くから神が支えられて来られました。この天界は、その大きくなる宇宙の外側。まるで膨れ上がるシュークリームのような、皮の外側に位置しています。我らが護る字宙はそのクリームのような物。何時破裂して皮を飲み込んでしまうかも知れません。また、柔らかなクリームは、何時形を変えるかも知れません。もちろん、それにあわせて皮の形態も変わって来ます」

 一人の女性がこんな事を話している。

 授業中、一人の『トロンズ』はその話を聴いていた。

『ジリリーン』と、ベルの音が聴こえ、授業が終わる。

「今日はここまで。明日はまたこの続きをやります。ちゃんと予習をしてきて下さいね」

 と、先生と思われるその女性は教卓から離れて教室を後にしていた。

「おーい。『トロンズ』!今日帰りに近くの喫茶店に行かないか?奢るぜ!」

 とは、親友の『ルシフェル』の言葉。

「うん。いいよ……でも、予習ちゃんとやっとかないと先生に怒られてしまうよ」

「なーに堅い事言ってるんだよ。そんなのチョチョイとしてればいいんだって!」

 気軽に答える『ルシフェル』

「分かったよ。遅くならなければね……そう言えば、妹の『ミカエル』は構わないの?」

「邪魔になるからいいや」

 と、少しうざったそうに答える。

「少しはお兄さんとしての自覚持った方が良いんじゃない?」

『ルシフェル』の言葉に、ちょっとしかめっ面の『トロンズ』

「そう言えば、『トロンズ』のお姉さん。どう?その後……身体の調子が悪いって聞いたんだけど?」

 そう、『トロンズ』には、双子の姉さんがいる。もともと外に出て行動するのが苦手で、明るい昼間に出歩くことはなかった。

「うん……未だ調子が悪いみたい。心配掛けちゃってるね」

「実はこの薬。ちょっとした知り合いから入手したんだけど……鬱病に効くんだってさぁ。どう?一つお姉さんに……」

「ありがたいけど……それって、一種の麻薬でしょう?ちょっとね……」

 その薬を遠ざけるように『トロンズ』は退く。

「まっ、しょうがないか……それじゃ、いつもの所で待ってるからな!」

 そう言うと、『ルシフェル』は今まで割り込んで来ていたこの教室から出て行った。

「相変わらず勝手な奴……」


 そんな夢を見て目覚めた。そして、結は辺りを見回した。

 真っ暗な視界には何一つ見い出せない。


―ボクが「トロンズ』?―


 それは役職名にしかならない名前。本当のこの世での名前ではない。しかし、『ルシフェル』はそう呼んでいた。

『ルシフェル』が、要?

 ボク達は親友で……そして、この天界を、宇宙を守護するために働いていた。


―「ルシフェル』……要……―


 どちらの記憶も持っているためか、どちらの名前で呼んだら良いのか見当が付かなくなっていた。そんな折、

「結!!」

 と呼ぶ声が聴こえてきた。それが、要の声だと気付くのには時間は掛らなかった。

「要?」

 大分、目が慣れてきたのか、辺りの様子が目に入ってきた。

 金色に光り輝く髪を揺らしながら『ルシフェル』の格好をした要がやって来る。

「要の髪。光り輝いてる!」

 とは驚愕の声である。

「みんな何処にいるのか捜して彷徨ってたんだ。やっと見つけた時にはそんな姿で、一瞬判らなかったぜ?」

 とは、確かに判らないであろう。全く面影の無いこの容貌であれば。

「さっき夢を見てたんだ。ボク達は、天界を守るための一員だって言う夢を……」

 要に告げる。

「ああ、それオレも見た。変な気分だよ」

「そう言えば、水の姿を見かけない……」

「水!?」

 一番最後に棺の中に入った彼女は、さっきの二人と同様、姿を消していた。

「この暗さじゃ、捜し出すのも苦労だな……」

 言葉を濁していた時、

「私はここよ!!」

 遠くから、水の声が聴こえてきた。『バサバサ』という翼の音を伴いながら。

「お前、その姿!」

 近くに来てその姿が明らかになった時に初めて驚く。

「私はどうやら、竜神人らしいわね」

 と、水龍の姿をした水がそこに降り立った。

「でも、この姿、人型にも出来るのよ!」

 と、得意げにメタモルフォーゼして見せる。

「すげっ!」

 大きな尖った耳を持った人型の竜神人。顔半分を覆う、爬虫類の青白い鱗がキラキラ光っている。

「何だか変な気分だわ。私の使命。それが解かったとたん、こんな暗闇にいるんだもの」

「お前の使命?」

「そう。私の使命は、晶先輩を守る事。でも何処に行けば良いのか分からないの」

 と、辺りを見回す。

 三人が出会ったのも束の間、再びこんな場所で時を過ごさなければならないとは、一体どう言う事なのであろうか。

「確か、オレ達がここに来る前に、後の四つの棺がどうとか言っていたよな?」

「うん。既に使命を全うするためにって……」

 あの言葉が本当であれば、既に先に来た者達は、この暗闇を脱し切れたと言っても過言ではない。

「思い出そう。そうすれば、使命とやらがおのずとして導いてくれるかもしれない」

「思い出す?」

「そう、力強く念じるんだ!」

 脈絡ない要の言葉を信じて、三人は念を込めた。

「オレ達が行かなければならない所」

 その瞬問、水の身体が光に包まれた。

「私、行かなきゃ。晶先輩の所ヘ!」

 すると、オーラに似た光が一つの線を描き飛び去って行った。

「水!」

 その様子を見届けて、後の二人も念じた。

「オレの……」

「ボクの……」

 そして同時に二人の背中から水と同じオーラが発せられ、二本の光りの線を描きながらこの場から消え失せた。

 二人の呪文に似た思い。


―晶ちゃん―


 答えは見つかった。


「遅かったじゃない」

 とは、水の言葉。

「悪かったな……お前みたく単純な思考回路、こちとらしてないからな!」

 と、要はいけしゃあしゃあと答える。

「三人三様に、『キーワード』とも言える物を夢に見てもらったのだけど……通じたようで良かったわ」

 と、今の結と同様の容貌をした晶が一つの椅子に座ってこちらを見下ろしていた。

「晶ちゃん!」

 驚いたように言葉を発する要。

「突然な事で申し訳なかったのだけど、これ以上の犠牲をこの天界に招く事はできなかったの。結に於いては、本当にごめんなさいね」

 と、少し申し訳無さそうに謝る昌。

「せっかく私の身体を譲ったばかりで、これからって時に……呼び戻してしまったなんて……」

「ううん!そんなことは良いよ。で、どうしたの?」

 話を元に戻すように問い返す。

「この天界に、異変が起こったの。それも、一回やそこらの事ではなくて、一日に何十回ともしれない異変……私達だけじゃ太刀打ちできないのよ」

「それで、ボク達にもその異変を解決して欲しいと言う事なんだね?」

「ええ、そうよ。この天界での一日は、地球の時間で換算すると百分の一秒と言うくらいの時間しか経たないの……逆にこの天界は地球の二日程の出来事が一日に襖算される程に長い。だから、今あなた達の身体は、地球では死んでいる形になっていても、生き返る事が可能な程の余裕がある。出来れば、早く解決してもらって、あなた達を地球に返してあげたいと思っているの」

と、語る晶は、忍びないと言う表情で三人を見渡す。

「なあ〜に、晶ちゃんのたってのお誘いとあっちゃ〜、オレ達手を貸すよ!」

「そうよ。どう言う事情であろうと、受けてたつわ!」

 要も、水もその覚悟は出来てると言った様子である。

「それじゃあ、まずここであなた達以外の同胞を紹介しておくわ」

 そう言うと、晶はその四人を紹介した。

「まず、要の兄、鎖。天界では『ケルビム』の称号を受けし者。そして同じくその兄、道。『セラフィム』の称号を持っています。あとこちらは、水の姉、四季。四大エレメンタル『ガブリエル』その兄、光一。同じく四大エレメンタルの一人『ラファエル』あなた達より先に転生した者達です」

 と紹介を受ける。

「兄ちゃん達が!?」

「姉さん兄ちゃん!?」

 やはりあの時見た光景はまことであったのか……と今はっきり思う二人であった。

「『ガブリエル』殿は、北の『玄武げんぶ』の地を守護してもらうため、このままこの地を去ってもらいます。周りに気を配って下さい。あと、『ラファエル』殿には、東の『青龍せいりゅう』の地を守護してもらいます。直ちにそこに控える者を従えて、出立して下さい!」

 その言葉を受け取り、素直に晶の命を聞き四季と光一は旅立つ準備を始める。

「あとは『ケルビム』殿と、『セラフィム』殿には、この地から南の『朱雀すざく』の地へと赴いてもらいます。この地は『ミカエル』殿が守護しておりますので、一先ずの応援をして差し上げて下さい」

 と言うと、あれ程仲が悪かったはずの二人は、荷物をそろえ旅立ちを承認した。

「それじゃ、オレ違は?」

と、要は晶に尋ねた。

「三人には、私と供に、西の『白虎びゃっこ』の地『ウリエル』殿が守護している地へ赴いてもらう事になります」

 そう言うと、

「『ウリエル』?」

 と、結が聞き返す。聴き知った名前であることに敏感に反応した。

「そう、あなたには、ちょっとかかわりがあったわね……そう、あなたを地球に導いた天使です」

「あの方に会える……」

 と、結は心無しか懐かしい気持ちになった。

「それじゃあ、ここに用意している荷物を持って今から出向きます。道中、危険が積み重ねられるとは思うのだけど、気を引き締めて行動して下さいね!」

 その言葉で行動を起こす要達は周りにいる天使達から荷物を授かり、この宮殿をを発ち、西の地白虎を目し旅立ったのである。

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