満月になった夜
―――注意事項―――
・この小説は東方二次創作品です。キャラクターのイメージなどがずれてる場合がございますご了承ください。
・この小説内での設定は独自のものです。
・その他読みづらい部分や、おかしなところがあるかもしれません
・咲夜さんは俺の嫁
・警告タグに「残酷描写あり」を入れていませんが、少し出血表現があります
それでは「満月になった夜」をお楽しみください
いつも変わらない日々、食事をするか、本を読むか、紅茶を飲むか、毎日それしかやることはなく、彼女は暇で暇でしかたがなかった。
たまにやって来る『吸血鬼ハンター』も、彼女の暇つぶしにはならなかった。
───図書館───
「パチェ~暇よ~、暇すぎるわ~」
「本でも読んだらどう?」
「字ばっかりも飽きたわ~」
「それじゃあこれはどう?」
パチュリーが差し出したのは絵本だった。
「ふざけてるの」
子供扱いされているような感じでレミリアは少しムッとした。
「冗談よ」
でもパチュリーはしれっと答えた。
「はぁー、何か面白い話とかないのー?」
「特にないわね、でも今から起こるじゃない」
「ああ、まあそうね」
そう2人が喋った所で何者かが図書館の2階を通った。
「来るわよ」
「またどうせザコじゃn」
その瞬間2人にナイフが飛んできた、パチュリーは小さなバリアを張って防いだがレミリアは避けた勢いでイスから落ちてしまった。
「いたたたた」
「大丈夫?」
「大丈夫、当たってないわ」
そう言いながらレミリアは起き上がる。
「ちっ」
ナイフを投げた人物は舌打ちをして2階から飛び降りた。
その姿は、フード付きのマントを羽織い、手からは銀のナイフ、そして体格はレミリアほどではないがまだ幼い少女で、髪は銀色の髪が長く伸びていた。
「あら女の子なのね、それじゃあ少し手を抜いてあげるわ」
「・・・結構だ」
少女がそう言った次の瞬間、レミリアの視界にはナイフしかなかった。
「へー、なかなかやれるのね」
少女が手を前に出すと、ナイフはレミリアに向かって飛んだ。
だがレミリアはナイフの波を抜け、一瞬にして少女の前に立って手を翳し
「へぇ、手は抜かなくていい、なら、食らいなさい」
そのまま一発ぶち込んだ
少女は吹っ飛び、本棚にぶつかってやっと止まった。
「あーあ、本が・・・」
「残念だったわね、私は運命が読めるのよ」
少女が飛んでいった本棚に向かってレミリアはいった。しかし少女は起き上がり、時をかけずにレミリアの前まで行きナイフを突き出した。
しかし
「無駄よ」
もちろんレミリアは分かっていた。ナイフを向けられた直後に一発の弾を少女に向けて撃った。
だが少女は後ろに下がりその弾をかわしナイフを放った。そしてレミリアも後ろに下がってナイフをかわし、立ち止まって
「さて、そろそろちゃんと本気を出してあげようかしら」
と言って、右手を前に出した。すると周りにはさっきのナイフの弾幕など比ではないようなほどの弾幕がそこには広がっていた。
「・・・ッ!」
「さあ、これを耐えきれるかしら?」
そう言うと全ての弾が少女に向かって放たれた。
・・・あっという間だった。少女は最初の数秒間は避けれていたが、いくら時を止めても運命を読むレミリアの弾幕からは逃れることは出来なかった。
少女は体中から血を流し、図書館の床に倒れていた。
「哀れね、本当に人間って弱い・・・」
そう言ってレミリアは倒れこんだ少女に近づいた。
だがしばらく倒れていた少女はいきなり起き上がり、膝立ちになって、またレミリアに向けてナイフを突きつけた。同時にレミリアはグングニルを翳した。
「どうする?そのナイフを下げるというのなら私も当てはしないわ」
それを聞いた少女は膝立ちからゆっくり立ち上がって、こう言った。
「これが私の使命だ」
その言葉を聞き、呆れた声でレミリアはこう返した。
「使命ね・・・そんなものの為にその弱い命を捨てるなんて」
「・・・黙れ」
少女は小さく呟く
「ましてや、その使命もあなたが勝手に思っているだけ」
「黙れ」
「私には分かるわ、両親を殺された。それも私と同じ吸血鬼に」
「黙れ!」
「それで敵討ちに吸血鬼狩りをしている。でもあなたは薄々分かっているんでしょ、こんな事しても無駄だって」
「黙れ!!・・・ッ!」
図書館全体に響き渡る大きさで少女は言い放ち、そして口からは血が吹き出た。
「ボロボロね、自分が思いこんでいるだけの使命にここまで・・・」
「あんたに何が分かる」
口を拭い、ヨロヨロになりつつも少女は続ける。
「お前達とは違って私達には時間に限りがある、その少ししかない時間の中で私は掛け替えの無いものを奪われた。だから私は私の限られた時間でお前達の時間を止めるためにここまできた。」
「・・・」
「・・・それなのに」
それまでヨロヨロでも強気で喋っていた少女だったが、急に悲しげな声を出した。
「それなのに、無駄だと分かったら私はこの残された時間をどう生きていけばいいんだ、愛するものを失い、その空いた隙間をどう埋めればいいんだ・・・」
ナイフを構えたまま少女は泣き出した。目から溢れ出る涙は血が混じって赤く染まった。ダメージと悲しみで少女のナイフを持った手は緩んでいた、レミリアならナイフをはじくことが出来たはずだが、レミリアはそうはせず口を開いた。
「愛するものを失った?違うわね、あなたは『愛する』ことを失ったのではなく『愛される』ことを失ったのよ、だからあなたは両親のために吸血鬼を狩って両親から愛されると思いたかった。守ってもらえると思いたかった。」
レミリアは少し厳しい口調で続ける。
「そんなことを使命というのならそんな使命今すぐ捨てなさい」
「じゃあ私は何を頼りに生きていけば!」
「そのかわり!」
レミリアはまだ続きがあると言うように少女の言葉を遮った。
「私があなたに私の運命を預けて、愛し、守ってあげる。」
レミリアは少女にナイフを突きつけられたままだが、掲げていたグングニルを消して、その手を少女が握るナイフの手に優しく当てた。
「そしたら、あなたも私に運命を預けて、私のことを愛し、守ってちょうだい。」
レミリアは少女のナイフを握る手をそっと下へ下ろして、少女を抱きしめた。
「ね?これまでただ思いこんでいただけの使命を持った吸血鬼ハンターは死んであなたは生まれ変わり、これからは私といっしょに正しい運命を背負って生きていくの、いいわね?」
抱きしめられている少女は泣きながら答えた。
「・・・はい」
そして少女は緊張が解け、疲れで体の力が抜けてレミリアに寄りかかるように気を失った。
「パチェ、回復魔法をお願い」
「・・・分かったわ」
今まで戦いが始まってから椅子に座って見ていたパチュリーはゆっくり立ち上がって少女とレミリアの元へ近づいた。
「それにしても珍しいわね、あなたが人間を生かして、こんなことをするなんて」
回復魔法をかけながらパチュリーは話した。
「・・・だってこれならしばらくは暇つぶしになるじゃない?」
「ああ、なるほどね」
「・・・それに」
小さな声でレミリアは続けて
「私も愛されてみたかったしね」
「・・・レミィ」
「ん?」
「私もいるわよ」
「ああ、そうね。」
――――――――――
「・・・ん」
「あ、目を覚ました」
(ビクッ!)
紅魔館の客間のベットに寝かされていた少女だったが、起きるとそこにレミリアの顔があって驚いた。
「失礼ね~、人の顔見て驚くなんて」
「ここは・・・ああ、そうか・・・」
少女は少し戸惑った様子を見せたあとにこれまでのことを思い出して納得した。
「・・・」
「どうしたの?まさか、昨日の約束はなしなんて言わないわよね」
少し黙って少女は考えてから口を開いた。
「昨日の約束は信じてもいいんですよね」
「ええ、私は破る気はないわよ」
「なら、私も信じます。信じて、あなたについて行きます。」
「よかった、ちょっと安心したわ。ところであなた名前はなんていうのかしら?」
「私は『立木 斤月』と、言っておきます」
「『立木 斤月』って・・・」
レミリアは振り返り部屋の隅にいたパチュリーの方を向いた。
「『新月』ね、うまいこと繋げると」
「やっぱり、それで『言っておく』というのはどういうことなの?」
レミリアは斤月の方に向き直って聞いた。
「その名前は育ててもらった人に付けてもらったんです。その人が吸血鬼ハンターだったので、吸血鬼が最も弱る『新月』にちなんで付けられたんですが、本当の親から付けられた名前は覚えてないので『とりあえず』ということです。ちなみにその吸血鬼ハンターの人に鍛えてもらったりもしました。」
「なるほどね、でも私の元にいるのにその名前はいただけないわね、それにあなたは生まれ変わったわけだし、私が新しい名前を付けるわ。いいわね?」
「はい、お願いします」
「そうね、新月に対抗して満月とか・・・ん~いいのが思い付かないわね~、パチェ、なにか満月の他の言い方とかないかしら?」
椅子の背もたれを支えに背中を反らせパチュリーの方を向いてレミリアは聞いた。
「たしか満月は『望月』ともいうらしいわ、ちなみに満月の前の日は『小望月』、次の日が『十六夜』とかって言うわ」
「『十六夜』!それいいわね!」
レミリアは勢い良く斤月の方に向き直って
「いいわ、今日からあなたの名前は・・・」
「『十六夜 咲夜』よ」
<あとがき>
現在連載中の小説を書いている息抜きに考えていたら、思いの他いい構想が浮かんだので書いてみた。自分でいうのもなんですがうまいこと書けた気がしますw
元々これを考えていたのは「どんな出会いをしたら咲夜さんが瀟洒なメイドになるか」ということを考えていたらこんな風になりました。ついでにカリスマがない状態からのカリスマがあふれ出るおぜう様とかもやってみたかった。
あと斤月の読みですが、「こんげつ」とも「きんげつ」とも読めてどっちも名前的には微妙な感じがするのであえて決めないことにしました。
ちなみに現在友人の友人に頼んでこの小説の絵の制作をお願いして、サウンドノベル的な動画を作ろうと目論んでおります。動画の方が完成したら、こっちにも絵をつけるかもしれません。まあ、まだまだ先になりそうですがw
とりあえず「満月になった夜」を読んでくださって、ありがとうございます。