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戦わない召喚士エレノアの異世界記録 ――名を受け取り、世界に触れる  作者: ぷにゅん


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第224話 変わった風

朝。


風が違っていた。


強さではない。


重さでもない。


“触れ方”が変わっている。


エレノアはそれを感じていた。


砂の上に立つ。


何もしていない。


だが。


分かる。


ネファルが言う。


(流れが整っている)


ラグナが言う。


(昨日と全然違うな)


ヴェルナシアが囁く。


(静か)


エレノアは目を閉じる。


深くは入らない。


触れない。


ただ。


“感じる”


地下。


あの存在。


変わらず、そこにある。


だが。


“張っていない”


以前のような圧がない。


押し返す気配もない。


ただ。


在る。


ネファルが言う。


(拒絶が薄い)


ラグナが言う。


(向こうも様子見だな)


ヴェルナシアが囁く。


(揺れている)


エレノアはゆっくり目を開ける。


その時。


気配。


一つ。


隠していない。


だが。


近づきすぎない。


昨日とは違う。


“構えがない”


エレノアは振り返る。


あの女性。


同じ距離。


同じ立ち方。


だが。


違う。


空気が。


女性が口を開く。


「……変えたな」


問いではない。


確認でもない。


“見たこと”を言っている。


エレノアは首を振る。


「変えてはいません」


短く。


女性はわずかに目を細める。


「なら」


ほんのわずかな間が空く。


「なぜ変わった」


エレノアは少しだけ考える。


そして言う。


「無理をしなかったからです」


沈黙。


風が砂を流す。


女性は答えない。


ただ、足元を見る。


砂を踏む。


確かめる。


そして。


「……負荷が減っている」


小さく言う。


後ろの一人が応じる。


「地下の反応も同様です」


女性は頷く。


わずかに。


そして。


再びエレノアを見る。


「……お前は何もしていないと言ったな」


エレノアは答える。


「はい」


「取っていません」


「押してもいません」


それだけ。


ネファルが言う。


(正確)


ラグナが言う。


(全部見せた後だしな)


ヴェルナシアが囁く。


(伝わっている)


女性はしばらく何も言わない。


長い沈黙。


やがて。


「……許可は出ていない」


言葉は厳しい。


だが。


以前と違う。


“止めるための言葉”ではない。


エレノアは頷く。


「はい」


女性は続ける。


「だが」


ほんのわずかな間が空く。


「排除も出ていない」


その一言で。


空気が変わる。


ネファルが言う。


(変化)


ラグナが言う。


(王が止めたな)


ヴェルナシアが囁く。


(繋がった)


エレノアは静かに答える。


「……そうですか」


女性は視線を外さない。


「監視は続ける」


「干渉もする」


短く。


はっきりと。


だが。


一つだけ。


以前と違う。


「だが」


少しだけ間を置く。


「壊すな」


命令ではない。


確認でもない。


“共有された前提”


エレノアは頷く。


「はい」


それだけで十分だった。


風が流れる。


砂が動く。


止まっていたものが。


少しずつ。


動き始めている。


女性は一歩下がる。


「次も見る」


それだけ言って、背を向ける。


部隊も動く。


音もなく。


砂の中へ。


エレノアはその背中を見送る。


何も言わない。


ネファルが言う。


(変わった)


ラグナが言う。


(敵じゃねぇな、もう)


ヴェルナシアが囁く。


(境界)


エレノアは空を見上げる。


風が通る。


軽い。


ほんの少しだけ。


世界が。


変わっていた。


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