第192話 森へ入る遠征隊
翌朝。
街の南門には、いつもより多くの人が集まっていた。
遠征隊の準備が整っている。
荷車。
予備の縄。
食料袋。
簡易の松明。
だが、大きな隊列ではない。
今回の遠征は調査だ。
動きやすさを優先している。
ヴァルクが門の前で言う。
「確認する」
全員の視線が集まる。
「目的は森の奥にある地下遺構の調査」
「戦闘の可能性は高い」
「だが無理はしない」
レナが横で笑う。
「無理しない遠征なんて聞いたことないけどな」
グレンが腕を組む。
「俺はどっちでもいい」
リサは弓の弦を確認していた。
「静かに動けるならそれで」
カイルは地図を広げる。
「まず昨日の入口まで向かいます」
エレノアは空を見上げる。
風がゆっくり流れている。
ヴェルナシアが囁く。
(今日は静か)
ネファルが言う。
(嵐の前)
ラグナが笑う。
(燃える準備はできてる)
ヴァルクが言う。
「出る」
門が開く。
遠征隊は歩き出した。
街の外。
畑を越え。
草原を越え。
森へ向かう。
グレンが歩きながら言う。
「静かな街だな」
レナが答える。
「いい場所だろ」
グレンは少し笑う。
「嫌いじゃない」
リサは先を見ている。
森の入口。
影が深い。
彼女は静かに言う。
「ここから音が変わる」
レナが言う。
「狩人の耳か」
リサは頷く。
「森が静かすぎる」
ヴァルクもそれを感じていた。
森の入口を越える。
空気が変わる。
葉が揺れる音。
土の匂い。
そして。
どこか重い空気。
エレノアは地面を見る。
地脈の流れ。
昨日と同じ方向。
森の奥へ。
カイルが言う。
「あと少しで昨日の場所です」
グレンが周囲を見る。
「……魔物の気配は少ない」
レナが言う。
「逆に怪しいな」
リサが木の上を見る。
枝の揺れ。
足跡。
彼女は小さく言う。
「ここ最近、何か大きいものが通ってる」
レナが笑う。
「昨日の巨獣だろ」
だが。
エレノアは違うことを感じていた。
ネファルが言う。
(地下)
ラグナが言う。
(増えてる)
ヴェルナシアが囁く。
(集めている)
地脈の流れが強くなっている。
森の奥。
地下。
そこへ。
やがて。
昨日の場所が見えてきた。
落ち葉の下の石。
地下への蓋。
グレンが近づく。
「これか」
レナが槍で落ち葉を払う。
「昨日見つけた」
グレンが蓋を見て言う。
「確かに人工だ」
リサは周囲を見ている。
「誰かが使ってる」
ヴァルクが頷く。
「開ける」
グレンが輪を掴む。
力を込める。
石の蓋が持ち上がる。
重い音。
ギギ……と擦れる。
冷たい空気が流れる。
地下の闇。
グレンが笑う。
「面白そうだ」
レナが槍を回す。
「だろ」
ヴァルクが言う。
「隊列を組む」
「前衛」
「グレン、レナ」
「中衛」
「エレノア」
「後衛」
「カイル、リサ」
全員が頷く。
松明に火がつく。
地下へ続く階段。
暗闇。
静寂。
エレノアは一歩踏み出す。
地下の空気。
冷たい。
そして。
魔力が濃い。
ネファルが低く言う。
(近い)
ラグナが笑う。
(面白くなってきた)
ヴェルナシアが静かに囁く。
(ここからが嵐)
遠征隊は階段を降りていく。
森の下。
誰も知らなかった場所へ。
そして。
地下の奥で。
何かが動いていた。




