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戦わない召喚士エレノアの異世界記録 ――名を受け取り、世界に触れる  作者: ぷにゅん


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第191話 遠征の朝

街の朝は、いつもより少しだけ騒がしかった。


鍛冶場からは、いつもより早い時間に槌の音が響いている。


市場の横では、荷車が並び、縄で箱を固定する音が聞こえる。


井戸の周りでは、人が集まり、何かを話している。


「森の奥だって」


「また魔物が出たのか?」


「いや、調査らしい」


そんな声が、あちこちから聞こえていた。


管理棟の前では、ヴァルクが腕を組んで立っている。


その前に、数人の冒険者が集まっていた。


レナが槍を肩に担ぎながら言う。


「ずいぶん集まったな」


カイルが書板を見ながら答える。


「募集は昨日の夕方だったんですが……」


「思ったより多いです」


ヴァルクが静かに言う。


「噂が早い」


レナが笑う。


「この街はそういう場所だ」


エレノアは少し離れた場所から、その様子を見ていた。


人が増えている。


装備を整える者。


地図を見ている者。


ただ様子を見に来ている者。


ネファルが言う。


(人が多いな)


ラグナが楽しそうに言う。


(面白そうじゃねぇか)


ヴェルナシアは静かに風を揺らす。


(人の集まり)


エレノアはその言葉を聞きながら、集まった人たちを見ていた。


剣士。


弓使い。


魔術師。


それぞれ違う装備。


違う顔。


そして、違う目的。


その中に、一人の男がいた。


大きな背中。


斧を背負っている。


年は三十くらい。


短い髭。


男は腕を組んでヴァルクを見る。


「森の奥だって聞いた」


声は低いが落ち着いている。


ヴァルクが頷く。


「調査だ」


男は少し笑う。


「調査にしては人数が多い」


レナが横から言う。


「怖いなら帰れ」


男は笑う。


「逆だ」


「面白そうだから来た」


カイルが書板を見る。


「名前を」


男は答える。


「グレン」


「戦士だ」


カイルが書く。


レナがエレノアを見る。


「どうだ」


エレノアは少し考える。


グレンは強い。


それは見ればわかる。


でも、それよりも。


落ち着いている。


無駄に力を誇らない。


エレノアは静かに言う。


「お願いします」


グレンが少し驚く。


「お前が決めるのか」


レナが笑う。


「この子が見つけたんだ」


「地下の道」


グレンはエレノアを見る。


しばらく。


そして少し笑う。


「……そうか」


その時。


もう一人、手を上げた。


細身の女性。


背中に弓。


短い金髪。


「私も」


レナが目を細める。


「弓?」


女性は頷く。


「偵察が必要でしょ」


カイルが聞く。


「名前を」


女性は答える。


「リサ」


「狩人」


レナが笑う。


「いいね」


ヴァルクが全員を見る。


静かに言う。


「遠征は森の奥」


「地下遺構の調査」


「戦闘の可能性あり」


沈黙。


だが誰も帰らない。


グレンが言う。


「報酬は?」


レナが笑う。


「あとで決める」


グレンは肩をすくめる。


「まあいい」


ヴァルクが最後に言う。


「出発は明日」


「準備を整えろ」


人が散っていく。


レナが言う。


「賑やかになったな」


カイルが頷く。


「遠征らしくなりました」


エレノアは空を見た。


風が流れている。


ヴェルナシアが静かに言う。


(嵐は人を集める)


ネファルが低く言う。


(そして選ぶ)


ラグナが笑う。


(面白くなってきた)


エレノアは静かに言う。


「……はい」


遠征は始まる。


そして。


森の奥で見つけた地下の道。


その先には。


まだ誰も知らないものが待っていた。

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