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戦わない召喚士エレノアの異世界記録 ――名を受け取り、世界に触れる  作者: ぷにゅん


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第187話 森を揺らすもの

巨獣が一歩踏み出した。


それだけで地面が沈む。


森の土が押し固められ、木々が軋む。


黒い結晶に覆われた体は、まるで岩山が歩いているようだった。


その胸の奥で、赤黒い光が脈打っている。


レナが思わず呟いた。


「……でかすぎる」


カイルが顔を青くする。


「普通の召喚獣じゃありません」


「魔力の量が桁違いです」


ヴァルクは黙って巨獣を見ていた。


そして静かに言う。


「結晶の核は胸だ」


レナが笑う。


「簡単に言うなよ」


巨獣が吠える。


森が揺れる。


その音は咆哮というより、地鳴りだった。


次の瞬間。


巨獣が突進した。


地面が爆ぜる。


エレノアはすぐに叫ぶ。


「散ってください!」


四人が同時に動く。


巨獣の突進が地面を抉る。


土が跳ね上がる。


木が一本、根元から折れた。


レナが横に転がりながら叫ぶ。


「こんなの槍で止まるか!」


ラグナが笑う。


炎が体の周りで弾ける。


「任せろ」


巨獣が振り向く。


ラグナに狙いを定めた。


次の瞬間。


巨獣の腕が振り下ろされる。


巨大な影。


ラグナは動かない。


拳を握る。


炎が爆ぜる。


轟音。


炎と結晶がぶつかる。


衝撃波が森を吹き抜ける。


木々の葉が一斉に舞い上がる。


レナが目を見開く。


「おいおい……」


ラグナは一歩も引いていない。


巨獣の腕を拳で止めていた。


炎が燃え上がる。


ラグナが言う。


「重いな」


巨獣が力を込める。


ラグナの足元の地面が割れる。


それでもラグナは笑う。


「でも」


炎が爆発した。


巨獣の腕が弾かれる。


巨体が一歩後ろへよろめく。


その瞬間。


ヴァルクが動いた。


低い姿勢。


一直線。


剣が閃く。


巨獣の脚へ斬撃。


金属のような音。


結晶の一部が削れる。


巨獣が怒りの咆哮を上げる。


尾が振り回される。


ヴァルクが跳ぶ。


木の幹を蹴り、距離を取る。


カイルが魔術を放つ。


光の束。


結晶へ叩きつける。


爆発。


だが結晶はまだ砕けない。


カイルが叫ぶ。


「硬すぎる!」


レナが歯を食いしばる。


「だったら割れるまで叩くだけだ!」


槍を構える。


地面を蹴る。


巨獣の側面へ。


槍が結晶に突き刺さる。


衝撃。


だが貫通しない。


巨獣の体が揺れる。


次の瞬間。


巨獣の尾がレナを薙ぐ。


レナは槍を地面に突き立てる。


体を支える。


衝撃。


吹き飛ばされる。


地面を転がる。


カイルが叫ぶ。


「レナ!」


レナは立ち上がる。


口元を拭う。


「……平気だ」


エレノアは静かに巨獣を見ていた。


その奥にあるものを感じている。


これはただの敵ではない。


召喚獣。


苦しんでいる。


胸が痛む。


ネファルが低く言う。


(迷うな)


エレノアは小さく頷く。


「分かっています」


ラグナが振り返る。


炎の目。


「どうする?」


エレノアは言う。


「胸の核を壊します」


「でも」


「体は壊さないでください」


ラグナが眉を上げる。


「注文が多いな」


エレノアは巨獣を見る。


「……この子は」


「戦いたくてここにいるわけじゃありません」


ラグナは少し黙る。


そして笑う。


「面白い」


炎がさらに強くなる。


その時だった。


森を、風が抜けた。


ざあっ――


枝が揺れる。


葉が舞う。


ヴェルナシアの声が、エレノアの意識の奥に響く。


(まだ、終わっていない)


巨獣の背中の結晶が光る。


地面の下から、黒い光が流れ込んでいる。


ネファルが言う。


(地脈だ)


カイルが驚く。


「下から魔力が供給されています!」


ヴァルクが低く言う。


「装置と繋がっている」


エレノアはすぐ理解する。


ここで倒しても終わらない。


供給が続く。


ヴェルナシアが言う。


(流れを断て)


エレノアが目を閉じる。


地面の奥。


地脈。


流れ。


感じる。


確かにある。


細い流れ。


そこへ。


エレノアが手を地面に触れる。


「ネファル」


ネファルが応える。


(承知)


黒い影がエレノアの背後に広がる。


地面へ潜る。


地脈へ。


巨獣の光が揺れる。


ラグナが笑う。


「弱くなったな」


炎が爆ぜる。


拳が振り下ろされる。


巨獣の胸の結晶へ。


衝撃。


結晶がひび割れる。


レナが叫ぶ。


「今だ!」


槍が突き込まれる。


ヴァルクの剣が重なる。


結晶が砕ける。


光が溢れる。


巨獣が大きく揺れる。


そして。


ゆっくりと。


崩れ落ちた。


森が静かになる。


風が吹く。


エレノアは巨獣を見る。


光が空へ消えていく。


召喚獣は、もう苦しんでいない。


ラグナが言う。


「終わったか」


ヴェルナシアが静かに言う。


(いや)


森の奥。


さらに奥。


まだ、地脈の流れが続いている。


ネファルが低く言う。


(これは入口だ)


ヴァルクが森の奥を見る。


そして言う。


「……本体がある」


エレノアは頷く。


ここから先が、本当の始まりだ。


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