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戦わない召喚士エレノアの異世界記録 ――名を受け取り、世界に触れる  作者: ぷにゅん


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幕間 朝霧しおりの夜

公園からの帰り道は、行きよりも少しだけ人が増えていた。


昼に近い時間になると、街の空気は少しだけ賑やかになる。


スーパーの前では買い物袋を持った人が行き交い、

自転車のベルが軽く鳴る。


しおりはその流れの中を、ゆっくり歩いた。


急ぐ必要はない。


今日は休日だ。


信号待ちの間、空を見上げる。


朝よりも青が濃くなっている。


「……あったかい」


思わず小さくつぶやいた。


春と夏の間のような、ちょうどいい空気。


風も強すぎない。


こういう日は、外にいるだけで少し元気になる。


コンビニの前で足を止める。


冷たいお茶を一本買う。


それだけのつもりだったのに、レジの横に並んでいた小さな菓子パンを見て、つい手が伸びた。


「……まあ、いいか」


休日くらい。


そう言い訳しながら袋を受け取る。


部屋へ戻ると、ベランダの洗濯物が風に揺れていた。


ちゃんと乾いている。


タオルを取り込む。


太陽の匂いがする。


それだけで、少し嬉しい。


「洗濯物、好きなんだよなあ……」


誰に言うでもない言葉。


タオルをたたむ。


シャツをたたむ。


そんな作業をしていると、時間がゆっくり流れる。


テレビをつける。


昼の情報番組。


特に見たいわけでもない。


でも、人の声があると部屋が少し広く感じる。


ソファに座り、コンビニで買ったパンを食べる。


お茶を飲む。


それだけの昼ごはん。


けれど、休日はこれで十分だった。


午後の光が部屋に差し込む。


しおりは本棚からもう一冊本を取り出した。


昨日の続きの小説ではなく、少し前に買った別のもの。


ページを開く。


物語の世界は遠い。


でも、読んでいると、不思議と心が落ち着く。


一時間ほど読んで、しおりは本を閉じた。


「……ちょっと眠い」


昼の静かな時間。


窓の外では風が木を揺らしている。


ベランダのカーテンがゆっくり動く。


ソファに横になる。


そのまま、少しだけ目を閉じる。


本当に少しのつもりだった。


でも、気づくと三十分ほど眠っていた。


「……あ」


起き上がる。


外はまだ明るい。


時計を見る。


夕方まではまだ時間がある。


しおりはキッチンへ向かった。


冷蔵庫を開ける。


中を見て、少し考える。


「今日は簡単でいいか」


卵と野菜。


簡単な炒め物を作る。


料理は得意ではない。


でも、嫌いでもない。


フライパンの音が部屋に広がる。


夕方の匂い。


料理を皿に盛る。


テーブルに置く。


一人で食べる夕飯。


静かな時間。


でも、不思議と寂しいとは思わなかった。


「……いただきます」


ゆっくり食べる。


テレビはつけない。


ただ、窓の外を見ながら食べる。


夕焼けが少しずつ暗くなる。


街の灯りが点きはじめる。


食べ終わると、食器を洗う。


水の音が静かに響く。


そのあと、シャワーを浴びた。


温かい湯気。


体の力が抜ける。


髪を乾かし、部屋へ戻る。


時計は夜の九時を少し回っていた。


しおりはソファに座る。


スマホを手に取る。


少しだけニュースを見て、

SNSを少しだけ眺める。


でも長くは続かない。


やがてスマホをテーブルに置いた。


窓の外を見る。


夜の街。


遠くの車の音。


今日も一日、特別なことは何もなかった。


でも、それでいいと思った。


「……明日からまた仕事か」


小さくつぶやく。


嫌ではない。


ただ、少しだけ緊張する。


人と関わる仕事だから。


でも、それも今の自分の生活だ。


しおりは立ち上がる。


寝室へ向かう。


ベッドに入る。


部屋の灯りを消す。


静かな暗闇。


布団の中は、少しあたたかい。


しおりはゆっくり目を閉じた。


今日は、よく歩いた。


少し疲れた。


でも、悪い一日じゃなかった。


そんなことをぼんやり思いながら、

意識はゆっくり沈んでいく。


外では風が吹いている。


遠くで車が通る。


それだけ。


しおりは、静かな眠りの中へ落ちていった。


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