表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦わない召喚士エレノアの異世界記録 ――名を受け取り、世界に触れる  作者: ぷにゅん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

199/229

幕間 朝霧しおりの休日

朝霧しおりは、目覚ましの音で起きた。


正確には、目覚ましが鳴る少し前だった。


休日の朝は、だいたいそうだ。


仕事の日よりも早く目が覚めてしまう。


「……もったいないな」


小さくつぶやく。


もう一度寝ることも出来る。


でも、今日はやめた。


布団からゆっくり起き上がる。


窓を開けると、まだ少し冷たい空気が入ってきた。


朝の空気は嫌いじゃない。


街はまだ静かだ。


遠くで車が一台通る音。


近所のアパートのドアが閉まる音。


それだけ。


「コーヒー……」


キッチンへ向かう。


特別な豆ではない。


スーパーで買った普通のもの。


でも、朝の一杯はやっぱり落ち着く。


お湯を沸かす。


ポットの音を聞きながら、しおりはぼんやり窓の外を見る。


休日の予定は、特にない。


洗濯。


買い物。


それくらい。


昔の自分なら、物足りないと思っていたかもしれない。


もっと予定を入れていた。


友達と遊んだり。

出かけたり。

忙しくしていた。


でも今は、これくらいがちょうどいい。


コーヒーの香りが広がる。


カップを両手で包む。


「……あったかい」


ソファに座る。


テレビはつけない。


スマホも触らない。


ただ、静かな部屋でコーヒーを飲む。


それだけの時間。


でも、その時間があると、少し安心する。


しおりはふと、テーブルの上に置いてある本を手に取った。


昨日の夜、途中まで読んでいた小説だ。


ファンタジー。


剣とか魔法とか、そういう世界の話。


昔から好きだった。


現実とは違う世界。


でも、読んでいると、どこか人の気持ちは同じで。


怒ったり。

悩んだり。

迷ったり。


そういうところが好きだった。


ページをめくる。


静かな時間が流れる。


30分くらい経っただろうか。


しおりは小さく伸びをした。


「……よし」


立ち上がる。


まずは洗濯。


休日の最初の仕事だ。


洗濯機を回している間に、部屋を少し片付ける。


クッションを整えて、

テーブルを拭いて、

窓をもう一度開ける。


太陽が少し高くなってきている。


「いい天気」


洗濯が終わる。


ベランダに出る。


風が少しだけ強い。


洗濯物を干しながら、空を見上げる。


青い。


雲も少ない。


こういう日は、散歩もいいかもしれない。


しおりは少しだけ迷う。


「……行こうかな」


決めるまでに、少し時間がかかる。


昔からそうだった。


でも、一度決めたら動く。


部屋に戻る。


簡単に着替える。


派手じゃない服。


歩きやすい靴。


それだけ。


玄関で靴を履く。


鍵を持つ。


ドアを開ける。


外の空気が、少し暖かい。


休日の街は、どこかゆっくりしている。


コンビニの前で立ち話をしている人。


犬の散歩をしている人。


小さな子どもと歩く親。


しおりはその横を静かに通り過ぎる。


特に目的地はない。


ただ歩く。


歩きながら、考えることもある。


考えないこともある。


今日はどちらでもなかった。


ただ、風が気持ちいい。


公園に着く。


ベンチに座る。


子どもがボールで遊んでいる。


犬が走っている。


それをぼんやり見ている。


「……平和だな」


誰に言うわけでもなく、そう思う。


しばらくして、近くの自販機でお茶を買う。


またベンチに戻る。


遠くで風が木を揺らす。


その音を聞きながら、しおりはゆっくり目を閉じた。


特別なことは、何もない。


でも、こういう日があるから、また頑張れる気がする。


そう思えた。


目を開ける。


空はまだ青い。


風がまた吹く。


しおりは小さく息を吐く。


「……さて」


立ち上がる。


そろそろ帰ろう。


洗濯物も乾いているはずだ。


帰ったら、何をしよう。


本の続きを読んでもいい。


夕飯の買い物に行ってもいい。


そんなことを考えながら、しおりは歩き出した。


静かな休日の午後へ向かって。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ