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ランタン修理

すっかり夜も更けて、再びランタンが灯り始めた頃。

ベルムートは火の小さくなったランタンの近くで、工具を広げて座っていた。

結局1日中遊び続けていた子どもたちと解散し、宿に向かって歩いていた理央とポコは、そんなベルムートに声をかけた。


「ベルムートさん、なになさってるんですか?」

「ランタン修理じゃよ。こうして火が小さくなってしまったものや、ランタン自体が歪んでしまったものなんかを探して修理しとるんじゃ」


話を聞いていると、遠くから工具を持った村人が駆け寄ってきた。


「ベルじい!!危ないですからもうランタン修理は_____」

「ふぉっふぉっふぉ、手先が覚えているうちは若いもんには負けんぞい」


村人はやれやれとため息をつく。

きっといつもこの調子なのだろう。

このやりとりに理央もふふっと笑う。


「お手伝いします」

「おぉ!それは助かるのう」


ランタンの歪みを直すのは素人の理央には難しいので、灯りを正しい大きさにする方法を学ぶことになった。


「まずランタンを両手で抱えるんじゃ。炎が小さい場合は力を送るようにしていく。炎が大きい場合は力を吸い取るようにして、大きさを調整するんじゃが……」


理央は言われた通りに、灯りの小さくなってしまったランタンを抱えて力を送った。

するとゆっくり炎が大きくなっていく。

灯りが元気に灯り始め、正しい大きさになった頃、理央の額にじんわりと汗が滲んでいた。


「これ、大変なお仕事ですね」

「いやあ、初めてなのに上出来じゃ!ポコなんかこれをやると必ず爆発させて____」


ボォン!!!

爆発音のあった方を向くと、爆発に巻き込まれて黒焦げになったポコがいた。


「ほらの」

「ポコ……!!」

「ピヨ〜……」


ポコは爆発して灯りの消えてしまったランタンを持って理央のほうへとやってくる。

その姿を見て理央は思わず少し笑った。

あまりにもまっ黒焦げな姿と、しょんぼりとした表情がマッチしていなくて面白くなってしまったのだ。


貸して、とポコから灯りの消えたランタンを受け取り、両手で力を送る。ポワ、とゆっくり小さな火種が生まれ、炎はだんだん大きくなっていった。


「全く無の状態から……そうかそうか」


ベルムートはほう、と感心したように頷き、ランタンに集中している理央を見据えた。


「はい、これで大丈夫。ですかね」


理央はポコに優しく微笑んでから、尋ねるようにベルムートに顔を向けた。

ベルムートは頷く。


「ああ、これでこのランタンも飾ることができるじゃろう」

「よかった」

「ピヨ!」

「先にお風呂入ってきちゃいな」

「ピヨ〜」


ぽてぽてとまっ黒焦げなままのポコは宿舎の方へと戻っていった。


「お主は、ランティアを知っておるかの」


ベルムートが手を止めて、遠くを眺めながら語り始める。


「ランティア……って、図書館の?」

「そうじゃ。あの人がいなければ図書館はもちろん、この灯りたちも……この村ですら無かった」

「この、村も……?」

「急にこんな話をしてすまなかったの。さ、今日はもうこのくらいで良いじゃろう。わしも帰る。お主も宿にもどんなさい」


ベルムートは立ち上がる。その横顔が少し寂しそうに見えた。

理央も急いで立ち上がり、ベルムートに向き直る。


「あの、ランタンの直し方教えてくれてありがとうございました。おやすみなさい」

「とても筋が良かったよ。おやすみなさい」


ベルムートが家に向かって歩いていくのを眺めていた。

宿の部屋に戻った理央は、部屋の灯りを落としたまましばらく天井を見上げていた。


「ランティアって、どんな人だったんだろう……」


小さく呟いた声に応えるように、窓の外で風鈴がカランと鳴る。

手元に置いたままのランタンは、まだ静かにあたたかく灯っていた。

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