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葉っぱ笛

次の日の朝。

夜の宴が、灯りが全て嘘だったかのように清々しい静かな朝。

用意してもらった宿で朝食を食べていると、

コンコンコン!!

と力強くドアがノックされた。


「「「りおおねーちゃーん!あーそーぼー!」」」

「んぐっ」


複数人の大声が部屋にこだまする。

理央は驚いて食べかけていたパンを喉に詰まらせた。


「げほっげほっ、あの子たち朝から元気すぎない……!?」


昨日の夜、灯遊びですっかり仲が良くなった理央と子どもたち(もちろんポコもだ)だったが、思っていた以上に懐かれていたらしい。

子どもとのコミュニケーションが上手いとは言えない理央だが、なぜだか子どもに好かれるところがあるのだ。


理央は急いで朝食を食べ切ると、


「はいはい。ポコ、行こう」

「ピヨ!」


ポコと共に部屋を出ていった。

子どもたちの手によって広場に連れてこられた理央とポコ。

ポコは小さな子どもたちと一緒に駆け回り始めた。


「葉っぱ笛?」

「そう!これ吹く人のきもちによって色が変わるんだよー!」


少し大きな子どもたちの口にはオレンジ色の葉っぱがくっついている。


「オレンジ色だと元気な証!毎日これで元気かどうか確認するんだ〜」

「りおお姉ちゃんも吹いてみて!」


子どもの中でも1番お姉さんであるフィーリアから、理央は葉っぱを手渡された。

えっどうしよう。これで真っ白とか真っ黒とかになっちゃったらどんな空気になるんだろう……。

そう思いながら理央は葉っぱを口に当て、ピィッと吹いた。


「わ!りおお姉ちゃん薄ピンク色だ!やさしーんだー!!」


子どもたちが元気に笑う。

まさか自分からこんなに優しい色が出てくるなんて。

子どもたちの笑い声に、ポコと駆けていた小さな子たちが近づいてくる。


「なになにー!?」

「葉っぱ笛やってるの〜??」

「ピヨ〜!!!」


いつの間に手にしたのか、ポコも負けじと葉っぱをくわえて、ふんっと吹くと____


「えっ、ポコの葉っぱ、虹色!?」

「すごーい!!」

「初めて見た〜!!」


ポコは誇らしげに手を腰に当てて、どやあ、と尻尾を振っている。

珍しい葉っぱの色に、子どもたちは大興奮だ。

笑い声が空に弾けていく。

理央はその輪の中で、ふと胸の奥がじんわりとあたたかくなるのを感じた。こんなふうに笑えたのはいったいいつぶりだろう……。

学校にいてこんなに大笑いすることも、輪の中心になることもなかった。別にそれでいいと思っていた。どこかで線引きをしていたけれど。


今、ポコと、アウローラ村の子どもたちとこうして笑い合っている時間に、無性に幸せを感じてしまう。


こんな時間が、長く続けばいいのになあ。


理央は明るくなった空を見上げてそう思った。

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