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2 お金持ちの従妹

 木々が生い茂り、動物たちに囲まれる生活をしているせいか、毎日動物と植物のセラピーに当てられ、私は自由奔放で、楽観的な人間になった。

 でも隣で窓の外を眺めている咲ちゃんは私よりずっと優しくて、論理的で、気を遣う人だと思う。

 呆然と咲ちゃんは窓の外を眺め続けている。


「山と森と川しかないでしょう。都会とは大違いよね」

「東京はビルしかないですよ。自然を見ている方が落ち着きます」


 まだまだ気を張った様子で咲ちゃんは口角を上げている。でも東京からでてから、今の方がずっと気が楽そうだ。


「大丈夫だった?お友達と別れることになって」

「それに、国外旅行にも連れて行って行けないし、欲しい物も買ってあげられないと思うわ」

「全然、大丈夫です。私森とかほとんど行ったことなくて、楽しみです」


 母と父は鏡越しに心配そうに苦笑いしている。


 山の中のサービスエリアのために、木々に囲まれた場所に屋根があって、ベンチがあった。私と咲ちゃんはそこに座っていた。

 両親は気を使って二人きりにしてくれていたようだった。風に当たり先ほどより表情がほどけているように見える。


「紬ちゃんって人に好かれるでしょ」

「なんで」

「紬ちゃんって、緊張感とかそういうのが無いから、一緒に居て落ち着くね」


 それは偽りではないと思った。東京からほとんど彼女の事を観察していたからわかる。今までで一番気楽そうな表情で笑っている。


「私の事心配したりしないの?」

「心配だけど、気を使ってあれやこれやって心配されるより、ほっとかれる方が私は良いから、そうしてた」


 正直言って、そこまで心配じゃない。私は人が思うほどやさしくないし、悪い性格をしていると思う。所詮私は自分の事しか考えてない。


「私が自殺したりするんじゃないかって思わない?」

「咲ちゃんは自殺するほど冷静さを欠く人間に見えない。電車に飛び込みとか、ビルから飛び降りとかできないタイプでしょ。人に迷惑かけたくないでしょ」


 咲ちゃんは重そうに頭を前にして、息を吐きだした。


「うん、そう。そうだよ」


 少し風が肌寒い。車が通りすぎていく音。しびれていた足が、ほぐれていく感じがしている。


「コーンスープ買ってくる」

「行ってらっしゃい」

「咲ちゃんも来て」


 まっすぐと咲ちゃんは私の事をみつめて「どうして」と聞いて来た。


「ただ、ついてきてほしいだけ」

「そう」

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