9. カフェのアルバイト
カフェの人気が上昇したことで、私たちだけでは対応しきれない状況になりつつあった。毎日たくさんのお客様が訪れてくれるのは嬉しい反面、忙しさに追われる日々が続いていた。私たちはもっと人手が必要だと感じ、新たにバイトを雇うことに決めた。
リュウとガイデンも賛成し、町の掲示板にバイト募集の告知を出すことにした。掲示板に貼り出した告知には、「ハーブティー好き大歓迎!私たちのカフェで一緒に働きませんか?」と書かれていた。このシンプルなメッセージには、私たちが新しい仲間を迎えることへの期待と喜びが込められていた。
告知を出した翌日から、早速何人かの応募があり、面接をすることにした。カフェの裏庭に設置した簡易的な面接スペースで、リュウとガイデンと私の三人で、応募者たちを迎えることにした。
最初にやってきたのは、元気で明るい性格の少女、アリスだった。彼女は町の出身で、ハーブやお茶に対して並々ならぬ興味を持っている様子だった。彼女がカフェのドアを開けた瞬間、そのエネルギッシュなオーラが店内に広がった。
「こんにちは!アリスです。ハーブティーが大好きで、ぜひお手伝いしたいです!」
彼女の笑顔はまるで太陽のように明るく、周りを照らす力があった。その元気な姿に、私はすぐに好感を抱いた。こんなにエネルギッシュな子がカフェに加わってくれたら、きっと店全体の雰囲気も明るくなるだろうと思った。
「アリスさん、どうしてハーブティーに興味を持ったの?」私は彼女に問いかけた。
「このカフェでハーブティーの魅力を知りました。その香りと味が大好きで、自分でも色々試してみるようになりました。ハーブティーの魅力をもっと多くの人に伝えたいんです!」
彼女の話を聞いて、私はその情熱に感銘を受けた。彼女なら、お客様にもその魅力を伝えられるだろうと確信した。
次にやってきたのは、落ち着いた雰囲気の青年、レオンだった。彼は異世界から来た私に興味を持ち、カフェで働くことを希望しているという。
「こんにちは。レオンと言います。お茶やハーブについてもっと学びたくて、ここで働かせてもらいたいです。」
レオンの誠実な態度と控えめな話し方に、私はすぐに安心感を覚えた。彼の落ち着いた雰囲気は、アリスの元気さと対照的でありながら、どちらもカフェにとって必要な要素だと感じた。
「レオンさん、ハーブティーに興味を持ったきっかけは何ですか?」私は彼に尋ねた。
「ダンジョンへ行くときに、ここのハーブティーを飲んでステータスを上げてから行くと、すぐにモンスターを倒せるようになったんです。それ以来、ハーブティーに興味を持つようになりました。」
彼の言葉に、私は自分のハーブティーが人々の生活を支え、力を与えていることを改めて感じ、嬉しくなった。
そして、真面目で几帳面な青年、マークが面接に来た。彼はカフェでの仕事に興味があり、細かい作業が得意だという。
「マークさん、あなたはどうしてカフェで働きたいと思ったのですか?」私は彼に尋ねた。
「カフェの雰囲気が好きなんです。特に、ハーブティーの香りに癒されます。ここで働くことで、自分のスキルを活かしながら、新しいことを学びたいと思っています。」
マークの真面目な姿勢に、私は彼がカフェの雰囲気をさらに良くする上で重要な役割を果たしてくれるだろうと感じた。
続いて、面接に来たのは、おしゃべりが得意で社交的な女性、ミリアムだった。彼女はカフェで働くことに対して非常に積極的で、接客が好きだという。
「ミリアムさん、接客が好きだとおっしゃいましたが、具体的にどのような接客をしたいと考えていますか?」私は彼女に尋ねた。
「お客様一人ひとりに合わせたサービスを提供したいです。例えば、お客様の好みに合わせたハーブティーを提案したり、楽しい会話でリラックスしてもらったり。カフェに来る時間が特別なものになるように心掛けたいです。」
ミリアムの明るく社交的な性格は、カフェの雰囲気をさらに温かくしてくれるだろうと感じたが、彼女の話には少し大げさなところがあるように思えた。彼女の話しぶりは確かに魅力的で人を引きつける力があるものの、現実離れした部分もあり、その点が気になった。
彼女の明るさはカフェにとってプラスになるかもしれないが、その一方で、真実味に欠ける部分がどのように影響するのかを考えずにはいられなかった。
最後にやって来たのは、若くて元気な少年、エリオットだった。彼は学校の授業の後に働ける場所を探していた。
「エリオットさん、学校の後に働くのは大変だと思いますが、どうしてカフェで働きたいと思ったのですか?」私は彼に尋ねた。
エリオットは少し照れながらも、元気よく答えた。「お茶が好きなんです。それに、ここで働くことで、いろんな人と出会えると思うんです。お客様とのふれあいを通じて、自分も成長したいと思っています。」
エリオットの若さとエネルギーは、カフェに新鮮な風をもたらしてくれるだろうと感じたが、学校と両立するのは難しそうだと感じた。
全ての面接が終わり、リュウとガイデンと共にどの応募者を採用するかを話し合った。
「アリスさんはエネルギッシュで元気だから、お客様にもその明るさが伝わると思うわ。彼女を採用したい。」
「レオンさんは誠実で落ち着いていて、ハーブティーに対する熱意も感じたよ。彼もいいと思う。」リュウが言った。
「マークさんも細かい作業が得意そうだし、良いと思う。」ガイデンが付け加えた。
最終的に、アリス、レオン、マークの三人を採用することに決めた。他の応募者には申し訳ない気持ちがあったが、カフェの運営に必要なバランスを考えると、今回の選択が最適だと感じた。
「アリスさん、レオンさん、マークさん、ようこそ!一緒に頑張りましょう。」
こうして、新しい仲間としてアリス、レオン、マークが加わった。彼らはすぐにカフェの仕事に慣れ、ハーブティー祭りの準備にも積極的に参加してくれた。
その日の夕方、私はカフェの裏庭で休憩を取っていた。新しいメンバーとの初対面で疲れていたが、同時にわくわくする気持ちもあった。そんな時、ふと物陰から声が聞こえた。
「どうして私が採用されなかったのかしら…。あんなカフェ、どうせ長続きしないわ。」
その声はミリアムだった。彼女が不満そうに呟きながらカフェを見つめていた。その姿を見て、胸が少し痛んだ。彼女の明るさや社交性は素晴らしかったが、今回の選択には合わなかったのだ。
「頑張ってね、ミリアム。きっとあなたに合った場所が見つかるはずよ。」心の中でそっとエールを送り、私は再びカフェに戻った。新しい仲間たちと共に、これからの挑戦に向けて気持ちを引き締める必要があった。