5. ハーブティーとトラブル
「これは美味しい！こんな飲み物があるなんて知らなかった。」
リュウの言葉に私は胸が躍った。私のハーブティーが異世界でも受け入れられるんだと、嬉しさが込み上げてきた。しかし、その喜びも束の間、次々とトラブルが発生し始めた。
まず、キッチンのオーブンが故障してしまった。新しい軽食メニューのパンを焼くために不可欠だったオーブンが突然動かなくなり、私はパニックに陥った。
「どうしよう、リュウ！オーブンが動かない！」
声が震えてしまう。こんな大事なときにどうしてこんなことが起こるの？リュウは冷静に状況を見極め、即座に対策を講じてくれた。
「大丈夫、菜々美。僕が何とかするから、他のことを続けて。」
リュウが工具を取り出し、オーブンの修理に取り掛かる姿を見て、少しだけ気持ちが落ち着いた。彼がいてくれて本当に良かった。私は他のスタッフに指示を出し、何とか注文をさばいていった。
次に、店内の一部が突然停電してしまった。原因は電力の供給が不安定だったことにあった。店内の照明が消え、客たちが不安そうな表情を浮かべる中、私は冷静さを保とうと必死だった。手持ちのキャンドルを配り始めながら、心の中で祈った。
「皆さん、少しの間ご不便をおかけしますが、キャンドルの光でお楽しみください。」
客たちは最初こそ戸惑っていたが、次第にキャンドルの温かい光に癒され、むしろロマンチックな雰囲気を楽しみ始めた。ほっと胸を撫で下ろしながら、これも一つの演出だと思い直す。
さらに、注文のミスも発生した。忙しさのあまり、スタッフが間違ったオーダーを提供してしまい、一部の客が不満を漏らし始めた。
「これは頼んだものと違います！」
その声に、心臓がドキリとした。すぐに駆けつけ、謝罪しながら状況を把握する。
「申し訳ありません。すぐに正しいオーダーをお持ちしますので、少々お待ちください。」
誠意を込めて対応すると、客は次第に納得し、再び笑顔を取り戻した。こういう時こそ冷静でいなければいけないと、自分に言い聞かせた。
こうしたトラブルが続く中でも、私は決して諦めなかった。リュウやガイデン、そしてスタッフたちと協力し合いながら、一つ一つの問題を解決していった。彼らの支えがなければ、きっと乗り越えられなかっただろう。
そして、ついに初日の営業が終わりに近づいた。疲れ果てていたけれど、店内を見渡すと、多くの客が満足そうにハーブティーを楽しんでいる姿が目に入った。それを見て、やっと少し安堵の気持ちが湧いてきた。
「みんな、本当にありがとう。今日は大変だったけど、なんとか乗り切れたね。」
感謝の気持ちを込めてリュウやガイデン、そしてスタッフたちに声をかけた。
「君のリーダーシップがあったからこそ、乗り切れたんだよ、菜々美。」
リュウが微笑みながら言い、ガイデンも満足げに頷いてくれた。
「これからもきっと色々なことがあるだろうけど、一歩ずつ進んでいこう。」
私は深く頷いた。今日のトラブルも、明日への教訓になると信じて。
「そうだね。これからもみんなで力を合わせて、素敵なカフェを作っていこう。」
こうして、私のカフェは順調なスタートを切った。初日から多くのトラブルが発生したが、それを乗り越えたことで、私たちは一層の絆を深めた。新しい生活と共に、新しい夢を実現するための第一歩を踏み出した私は、これからも前向きに頑張っていくことを心に誓った。
翌日、私は早く目を覚ました。前日の疲れがまだ残っていたが、それ以上に充実感と達成感が心を満たしていた。窓から差し込む朝陽が部屋を明るく照らし、新しい一日が始まるのを感じた。
「今日も頑張ろう。」
自分に言い聞かせながら、ベッドから起き上がる。昨日のトラブルを教訓に、今日はさらに良いサービスを提供できるように努力しようと決意した。
リビングに行くと、リュウとガイデンがすでに朝食の準備をしていた。香ばしいパンの香りと温かいスープの香りが漂い、私の胃袋を刺激する。
「おはよう、菜々美。昨日は本当にお疲れ様。」
リュウが笑顔で言い、ガイデンも頷いた。
「おはようございます。今日は昨日以上に頑張ります！」
微笑みながら答え、朝食のテーブルについた。三人で食事をしながら、今日の計画を立てる。
「まずは、オーブンの修理が完了しているか確認しよう。それから、電力の安定供給のために対策を考えないと。」
リュウが提案し、私も同意した。
「あと、オーダーミスを防ぐために、スタッフ全員で確認作業を徹底しよう。」
ガイデンも追加の提案をし、全員が納得した。
朝食を終えた後、私は店に向かった。昨日のトラブルを乗り越えたことで、今日はさらに自信を持ってカフェを運営できると感じていた。店に到着すると、すでに数人の客が並んで待っていた。
「おはようございます！今日はどんなハーブティーを試してみたいですか？」
元気よく客を迎え入れ、再びカフェの営業を開始する。初日の経験を活かし、スムーズにオーダーを取って提供していく。リュウとガイデンもそれぞれの持ち場で一生懸命働いていた。
そして、昼頃には昨日以上の賑わいを見せるカフェとなり、私は新しい常連客と交流しながら、異世界の文化や習慣についても学んでいった。
こうして、私のカフェは順調に成長していった。毎日が新たな挑戦と発見の連続であり、その度に私は成長していった。仲間たちと共に、異世界での新しい生活を楽しみながら、これからも頑張っていくことを心に誓った。
