4. カフェの開店
次に待ち受けていたのは、カフェの準備だった。メニューの考案やインテリアの選定、家具の調達など、やることは山積みだった。
私は日本での経験を活かし、異世界の素材を使ってどんなメニューが作れるかを試行錯誤した。
「まずはハーブティーだけで始めてみようかな。」
異世界にはハーブティーもない。こんなに違う世界があるなんて、本当に不思議だわ。まるで夢を見ているみたい。でも、この新しい世界で何か自分にできることを見つけたい。そう考えた時、ふと頭に浮かんだのがハーブティーだった。
ハーブティーは私にとってただの飲み物じゃない。リラックスしたい時や、少し元気が欲しい時、何かに集中したい時、いつもそばにあった。私の心を支えてくれる大切な存在だった。だから、この異世界でも同じように、みんなの心を癒すことができるかもしれないと思った。
この異世界には、私の世界でいうハーブはないけど、同じような草はたくさんある。少しがっかりしたけど、これを機に新しいハーブティーを作ってみることにした。どんな効果があるのか、どんな味がするのか、試してみないと分からない。
リュウとガイデンも興味を持ってくれて、一緒に試飲を手伝ってくれた。リュウは「草をお湯に入れて飲むなんて奇妙だな」と最初は戸惑っていたけど、一口飲んでみると「これ、結構いけるかも」と笑ってくれた。ガイデンも「これは面白い発見だ」と、真剣に味を確かめてくれた。
何度も何度も試作を繰り返した。思ったような味にならない時もあったし、逆に予想以上に美味しくできた時もあった。そのたびに、リュウやガイデンの反応が励みになった。
「このハーブティー、美味しいけど、ちょっと苦味が強いかな。」
リュウがそう言うと、私は「じゃあ、このハーブを少し減らしてみたらどうだろう?」と提案する。
「なるほど、そうしてみよう。」
ガイデンが頷きながら、新しい組み合わせを試す。こうやって一つ一つのレシピが形になっていく過程は、本当に楽しかった。
異世界に来てから、いろんなことがあった。驚きと不安でいっぱいだったけど、こうして新しい挑戦ができることに、少しずつ自信が湧いてきた。リュウやガイデンの協力もあって、この世界で自分ができることが見つかる気がしてきた。
異世界のハーブを使ったハーブティーが、みんなの心を癒す存在になればいいな。そんな願いを胸に、私は今日も新しいレシピを考えている。
インテリアの選定も一筋縄ではいかなかった。古い建物の良さを活かしながら、温かみのある居心地の良い空間を作りたいと考えた私は、町の雑貨店やアンティークショップを巡り、家具や装飾品を探した。
「この椅子、素敵だけど、ちょっと予算オーバーかな……」
「いや、これは一目惚れしたやつだから、絶対に必要だよ!」
リュウが興奮気味に言い、私は苦笑しながらも同意する。
「じゃあ、これにしましょう。でも、他のところで少し節約しないとね。」
こうして少しずつカフェの内装が整っていき、新しい生活に対する希望と共に、カフェ開店の日を心待ちにしていた。
しかし、困難はまだ終わらなかった。開店前日、最後の仕上げに取り掛かっていた私たちに、新たな試練が訪れた。
「水漏れだって!?どうしよう!」
キッチンで配管が古くなっていたことに気づかず、水漏れが発生してしまったのだ。私はパニックになりながらも、リュウとガイデンに助けを求めた。
「落ち着いて、菜々美。俺たちでなんとかするから。」
リュウは迅速に修理道具を集め、ガイデンと共に配管を修理し始めた。私は手伝いながら、なんとか問題を解決した。
「ふぅ……なんとか間に合った。」
汗を拭いながら、再びカフェの準備に取り掛かった。その夜、ガイデンとリュウに囲まれて、最後の打ち合わせを行った。
「明日はついに開店だね、菜々美。」
リュウが興奮気味に言い、ガイデンも満足げに頷いた。
「みんなが協力してくれたおかげで、ここまで来れたよ。本当にありがとう。」
感謝の気持ちでいっぱいだった。目には涙が浮かんでいたが、その涙は喜びと感謝の涙だった。
「さあ、明日に備えてしっかり休もう。明日は忙しくなるぞ。」
ガイデンの言葉に頷き、ベッドに入った。心地よい疲れと共に、すぐに深い眠りに落ちた。
翌朝、早く目を覚ました。窓から差し込む朝陽が部屋を明るく照らし、鳥のさえずりが聞こえてくる。
「おはよう、菜々美。今日はついに開店だね。」
リビングに行くと、ガイデンが朝食の準備をしていた。香ばしいパンの香りと温かいスープの香りが漂い、胃袋を刺激した。
「おはようございます、ガイデンさん。はい、とても楽しみです。」
微笑みながら答え、ガイデンの手伝いをすることにした。朝食を食べながら、三人は最後の確認を行った。
「メニューはこれで大丈夫だね。内装も完璧だ。」
リュウが満足げに言い、私も自信を持って頷いた。
「はい、みんなのおかげでここまで来られました。ありがとうございます。」
ガイデンは優しく微笑みながら、肩に手を置いた。
「さあ、みんなで頑張ろう。きっと素敵なカフェになるさ。」
カフェはついに開店の日を迎えた。朝から町の広場はいつも以上に賑わっていた。人々の好奇心を刺激したポスターが効果を発揮し、町中の人々が新しいカフェに興味を持って集まっていた。
「さあ、始めようか!」
リュウがエプロンを身につけながら言った。緊張しながらエプロンを締め直した。
「そうだね、リュウ。頑張ろう!」
ガイデンは微笑みながら私たちを見守っていた。
「大丈夫だよ、菜々美。君ならきっと素晴らしいカフェを運営できるさ。」
その言葉に励まされ、店のドアを開けた。外にはすでに数人の客が並んでいた。
「いらっしゃいませ!どうぞ、お入りください!」
元気な声が響き、客たちは興味津々に店内に入ってきた。店内はハーブの香りが漂い、温かみのあるインテリアが居心地の良さを演出していた。カウンターに立ち、リュウと共にオーダーを取り始めた。
最初の客は年配の夫婦だった。少し戸惑いながらも、私の説明に耳を傾けていた。
「ハーブティーですか?どんな味がするんでしょう?」
「こちらはカモミールティーです。リラックス効果があり、ストレスを和らげてくれますよ。」
優しく説明しながら、カップにハーブティーを注いだ。夫婦は一口飲んで、その穏やかな味わいに感嘆の声を上げた。