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31. カフェを忘れて休息へ

カフェの一角で、私たちはようやく戦いの緊張から解き放たれ、ほっと一息ついていた。

重苦しい空気が漂っていたはずのこの場所が、少しずつ安らぎに変わっていくのを感じる。

戦いの余韻をまだ引きずりながらも、カフェの暖かな灯りに照らされていると、心も体も少しずつ軽くなっていくようだった。


カウンター越しにリュウが、両手を頭の後ろで組み、大きく伸びをした。

その瞬間、彼から発せられた長いため息が、私たち全員に広がっていた緊張感を少しだけ和らげたようだった。


「はぁ…これでようやく、少し休めるな」とリュウが呟く。

彼の顔には、いつも見せている強さがあったが、それでも戦いの疲労が隠しきれていなかった。私たち全員が限界を迎えていることは、もはや誰の目にも明らかだった。


「本当だよな、ずっと戦いっぱなしだったから、体も気持ちも限界だ」とマークが相槌を打つ。

彼の声には、少しだけ緊張が解けた安堵感が混じっていた。


私は静かに椅子に腰を下ろし、しばらく考え込んでいた。

このところの出来事が、私たち全員にどれだけの負担を強いてきたのか。夢の魔術師との戦い、そしてレオンの死。私たちはそれぞれがその出来事に耐え、戦い続けてきたが、疲労の色が徐々に顔に出てきているのは否定できなかった。


「ねえ、少し休みを取るってどうかな?」


私は突然、そう提案した。自分でも驚くほど自然に口をついて出たその言葉に、みんな一斉に私の方を向いた。リュウの目は興味を引かれたように輝き、アリスも同意を求めるような視線を投げてきた。


「休みか…いい考えだな」とリュウは頷きながら腕を組んだ。「でも、どこに行こうか?」


その時、アリスがふと顔を上げて提案した。「温泉なんてどう?」


「温泉か!」マークが目を輝かせて笑顔を見せる。「それは最高だ!温泉に浸かって、全身の疲れを癒せるなんて、これ以上の贅沢はないよ」彼の反応はまるで子供のように純粋で、思わずみんなも笑みを浮かべた。


「確かに、温泉ならリラックスできそうね。疲れた体にはちょうどいいわ」と、ガイデンが静かに賛成の意を示した。彼女もどこか疲れているように見えたが、その口調には相変わらずの冷静さがあった。


「じゃあ、決まりだね!」私が言うと、仲間たち全員の表情が一気に明るくなった。温泉という選択肢が、まさに今の私たちに必要な癒しをもたらしてくれるような気がした。


「どこか近くに温泉があるのか?」リュウが疑問を口にした。


アリスは少し考え込むような顔をしてから、「近くというわけじゃないけど、馬車で半日くらいで行ける温泉地があるって聞いたことがあるの」と答えた。


「半日か。それならそんなに遠くないな」とリュウが応じる。


「そう、景色も良くて、温泉もすごく気持ちがいいって評判らしいの。旅館も伝統的で、ゆっくり休むには最適よ」とアリスが説明すると、マークが目を輝かせた。


「へえ、その温泉街、何か特産品とかあるの?」とマークが興味津々に聞く。


「確か、街の名前は『カレンドラ』って言ったと思う。特産品は、そこの山で採れる珍しいきのこや、野生の鹿肉が有名みたいね。カレンドラでしか食べられない『山の幸の盛り合わせ』が、観光客にも大人気って聞いたわ」とアリスが言うと、みんなの興味がさらに膨らんだ。


「おお、山の幸か!新鮮なきのこや、ジューシーな鹿肉かぁ…考えるだけでよだれが出てきそうだ」とマークが感激しながら言うと、リュウも笑った。


「鹿肉はいいな、タンパク質たっぷりだし、体力も回復しそうだ。それにしても、温泉で体を癒して、その後に地元の料理を楽しむなんて、最高の休息になるな」とリュウが言うと、ガイデンも穏やかに頷いた。


「カレンドラは景色も素晴らしいわ。高台にあるから、街全体から山の絶景を眺められるそうよ。夕方になると、山がオレンジ色に染まって、本当に美しいらしいの」とガイデンが静かに付け加えた。


「へえ、夕焼けが見える温泉か。それはロマンチックだな。ちょっと期待しておこうかな」とマークが冗談めかして言うと、アリスが笑いながら軽く彼の肩を叩いた。


「まったく、温泉に浸かりながら夕焼けを見るなんて、最高のリフレッシュになるわね」と私も微笑んで言うと、リュウが腕を組みながら満足げに頷いた。


「よし、決まりだな。カレンドラに向かおう。温泉でゆっくりして、美味しいものをたくさん食べて、しっかり休息を取ろうぜ」


「温泉か…」私もその提案を噛みしめるように考える。自然の中で湯気が立ち上る温泉に浸かり、疲れを癒す。その光景が頭に浮かんだ瞬間、私の体も心もその温泉を欲しているのが分かった。


「確かに、温泉なら全てを忘れてリラックスできそうだね」


「じゃあ、決まりだな!」リュウが笑顔で言い、全員がその提案に賛同した。


カフェの穏やかな空間の中で、私たちは温泉行きを決めた。外には柔らかな陽射しが差し込み、窓からは静かな風景が広がっていた。戦いの後のこのひと時が、まるで私たちにもう少し休んでもいいと言ってくれているようだった。


「よし、明日の朝早く出発しよう」とリュウが決め、私たちはそれぞれ出発の準備を考え始めた。温泉地までの道のりは半日と聞いたが、何だか久しぶりに心が軽くなった気がした。


「じゃあ、温泉の準備でも始めるか」とリュウが意気揚々と言い、みんなが温泉への期待感に包まれた。温泉旅館での休息が、私たちにとって新たな始まりになる気がしていた。

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