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3. カフェの開店準備

リュウに助けられてから数週間、私はガイデンの家に滞在しながら、少しずつ町の生活に慣れてきた。リュウやガイデンの助けを借りて、異世界の文化や習慣を学び、友達もでき始めていた。しかし、心の中にはまだ不安が残っていた。そんなある日のこと、ガイデンが夕食の後に一言こう言った。


「菜々美、ちょっと話があるんだが……」


ガイデンがにやりと笑い、私を庭に誘った。リュウも興味津々に続いてきた。庭に出ると、ガイデンは古びた建物を指差した。


「あの建物、ずっと空き家になってるんだ。手入れすれば、何かに使えると思わないかい?」


建物を見上げると、年季の入った木造の家屋があった。古びた外観には歴史を感じさせる雰囲気が漂い、リフォーム次第で素敵な場所になりそうだと思った。でも、私に何ができるだろう?


「でも、私に何ができるでしょうか……?」


不安げに問いかけた私の心には、実は一つのアイデアが浮かんでいた。私の趣味であり、得意とするハーブティーを活かせる場所、それはカフェだった。


「実は、私に一つアイデアがあるんです。ちょっと試してみてもいいですか?」


そう言って、家の中に戻り、偶然持ってきていたハーブの束を取り出した。リュウとガイデンは興味津々に私の動きを見守っていた。ハーブを丁寧に選び、お湯を沸かして即席のハーブティーを作り始めた。


「これは何をしているんだい?」ガイデンが尋ねた。


「ハーブティーという飲み物を作っているんです。私の世界では、リラックス効果や健康に良いと言われています。」


お湯が沸くと、ハーブを入れて数分間蒸らした。香りが広がり、リュウとガイデンはその香りに引き寄せられた。しかし、二人の表情には戸惑いが浮かんでいた。


「草をお湯に入れて飲むのかい?」リュウが疑問を口にした。


「ええ、そうです。このハーブティーはリラックス効果があるんです。例えば、このカモミールはストレスを和らげてくれるんですよ。」


カモミールの小さな花を指差しながら説明すると、リュウは眉をひそめた。


「でも、草を飲むなんて……それに、どんな味がするんだ?」


微笑みながらカップにハーブティーを注ぎ、二人に差し出した。


「飲んでみてください。」


恐る恐るカップを手に取り、一口飲んだ二人の表情がぱっと明るくなった。


「これは……美味しい!今まで飲んだことのない味だ。」リュウが感嘆の声を上げ、ガイデンも頷いた。


「確かに、これは驚きだ。草とは思えない美味しさだ。」


安堵の表情を浮かべた私は、彼らの反応に心から嬉しくなった。この異世界でハーブティーがどれだけ受け入れられるか不安だったけれど、その反応は期待以上だった。


「例えば、ミントは消化を助ける効果があり、レモンバームは不安を和らげてくれます。ハーブティーは健康に良い影響を与えるだけでなく、リラックスする時間を提供してくれるんです。」


リュウは再びカップに目を落とし、興味深げに聞いていた。


「なるほど。ハーブティーにはそんな効果があるのか。」


ガイデンも感心したように頷いた。


「この世界にはなかった新しい発見だな。菜々美、これは本当に素晴らしい提案だよ。」


嬉しそうに微笑んだ私は、さらに意気込んで言った。


「ありがとうございます。私、この町でカフェを開きたいんです。ハーブティーやお茶を提供して、みんなが集まってリラックスできる場所を作りたいんです。」


リュウは興奮気味に言った。


「それは面白いアイデアだな!僕も手伝うよ、菜々美。」


ガイデンも同意し、力強く言った。


「町のみんなも協力してくれるさ。私もできる限り手伝うよ。」


こうして、カフェを開くことを決意した。しかし、実際に取り掛かってみると、その道のりは決して平坦ではなかった。まずは建物の修繕から始めることになった。古びた建物は長年の風雨にさらされ、修復にはかなりの労力が必要だった。


最初に取り掛かったのは壁の修繕だった。壁はひび割れ、ところどころが崩れかけていた。大工の職人たちが慎重に壁を調査し、補強が必要な箇所を特定してくれた。


「この壁、もう少し持ちこたえられるかと思ったけど……」私はぼやきながら壁に手を当てた。


リュウが笑いながら答えた。「まあ、古い建物だからね。予想していたより手間がかかるのは仕方ないよ。」


職人たちは手際よく作業を進め、壁を補強し、ひび割れを修復していった。私たちもペンキを塗る手伝いをしたり、掃除をしたりと大忙しだった。リュウとガイデンが冗談を言い合い、笑い声が響く中で作業が進む。


「リュウ、あの時の君の顔ったら!まるで幽霊を見たかのようだったよ!」ガイデンが昔の話を持ち出し、リュウが顔を赤くして言い返す。


「おばあちゃん、それはもう忘れてくれよ!」リュウは照れ笑いを浮かべながら言った。


和気あいあいとした雰囲気の中で、修繕作業は少しずつ進んでいった。しかし、時には予想外の問題も発生した。ある日、壁の裏側に隠れていた水漏れが見つかり、大工の職人たちが急遽配管の修理をすることになった。


「これも直さないと、後々大変なことになるからな」と職人の一人が言った。


配管の修理が完了すると、次は床の張り替え作業が始まった。古い床板はところどころ腐っていて、新しい板に交換する必要があった。私たちは職人たちと一緒に古い床板を剥がし、新しい板を丁寧に敷いていった。


「この板、思ったより重いな」とリュウが苦笑いしながら言った。


ガイデンが笑いながら、「リュウ、大丈夫?無理しないでね」と声をかける。


リュウは笑顔で頷きながら、「ありがとう、大丈夫だよ。これもカフェのためだからね」と答えた。


床の張り替えが終わると、次は天井の梁の修復作業が待っていた。天井の一部が老朽化していて、補強が必要だった。リュウとガイデンが梯子を使って天井に登り、私は下からサポートする形で作業を進めた。


「気をつけてね、リュウ。落ちないように」と私は声をかけた。


リュウは笑いながら、「大丈夫、大丈夫。これくらい平気さ」と答えた。


しかし、作業は思った以上に難航した。天井の梁が老朽化していて、修復には慎重な作業が必要だった。ガイデンが工具を使って慎重に梁を補強していく姿を見て、私は改めて彼女の器用さと頼もしさを感じた。


「よし、これで大丈夫だと思う」とガイデンが満足げに言った。


リュウも頷き、「うん、これで安心だ」と同意した。


次に取り掛かったのは、カフェの外観の修繕だった。古びた看板や外壁を新しくすることで、カフェの雰囲気を一新させることができる。リュウとガイデンが新しい看板のデザインを考え、私はそれを元にペンキで塗り直した。


「この色、いい感じだね」とリュウが言いながら、看板を取り付ける手伝いをしてくれた。


ガイデンも微笑みながら、「そうね。新しい看板があるだけで、お店の雰囲気が全然違うわ」と言った。


さらに、カフェの周囲の庭も手入れすることにした。雑草が生い茂っていた庭を整え、花や木を植えて、カフェの外観を美しくすることに決めた。リュウが庭仕事を手伝ってくれ、ガイデンは花の配置を考えてくれた。


「ここに花を植えたら、もっと綺麗になるんじゃない?」とガイデンが提案し、私たちはそのアイデアを取り入れた。


「そうだね。この庭が綺麗になると、お店全体の雰囲気も良くなるからね」と私は言った。


そして、最後の仕上げとして、私はカウンターに特製のハーブティーのディスプレイを作った。カフェの目玉となるハーブティーを、訪れるお客様に紹介するためのコーナーだ。


「これで準備完了ね」と私は満足げに言った。


リュウもガイデンも頷きながら、「うん、これでバッチリだ」と同意した。


こうして、カフェの修繕作業は完了した。大変な作業だったが、みんなで力を合わせて一つ一つの問題を乗り越えていったことで、私たちの絆も深まった。そして、このカフェが多くの人々に愛される場所になることを願いながら、オープンの日を迎える準備を進めた。


さらに、持ってきたハーブの種を使って庭にハーブを植えることを決意した。リュウとガイデンも手伝い、彼らは一緒に庭を耕し、ハーブの種を撒いた。


「ここにカモミールを植えて……こっちにはレモンバームを植えましょう。」


指示を出しながら、ハーブの苗を丁寧に植えた。リュウとガイデンもそれに従い、手際よく作業を進めた。


「これでハーブが育てば、カフェで使う材料も自分たちで賄えるようになるね。」リュウが言い、ガイデンも満足げに頷いた。


「そうだね。これからの成長が楽しみだ。」


自分たちの手で育てるハーブティーが、どんな風にカフェを彩るのかを想像しながら、胸を膨らませた。新しい友人たちと共に、新たな生活を始めていく。ハーブが芽を出し、成長していく姿を見守りながら、自分の夢に向かって一歩ずつ進んでいったのだった。

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