12. 陰謀とハーブティー
エドワードの失踪事件を乗り越えて、私たちのカフェは再び平穏を取り戻し、多くの客で賑わうようになった。王女殿下が訪れたことが町中の話題となり、多くの客がカフェを訪れるようになった。その賑わいの中で、私たちのカフェが陰謀の舞台にされるなんて、誰も予想していなかった。
その日の夜、リュウが町の酒場で情報を集めていると、怪しい話を耳にした。
「王女が訪れたあのカフェ、実は陰謀の舞台らしいぜ。」
リュウは酒場の片隅でその話を聞き、驚きと疑念が交錯した。急いで話の続きを聞くために、話している男たちに近づいた。
「何だって？詳しく聞かせてくれ。」
リュウは落ち着いた声で話しかけ、男たちは驚いた表情を見せたが、リュウの真剣な眼差しに気付き、話し始めた。
「お前、あのカフェの関係者か？だったら注意しろよ。聞いた話じゃ、王族の中にあのカフェを使って何か企んでる連中がいるらしいんだ。」
リュウはさらに興味を引かれ、詳細を尋ねた。
「何を企んでるんだ？具体的には何をするつもりなんだ？」
男は周囲を見回し、慎重に声を潜めて話し始めた。
「王女殿下があのカフェに訪れたのは、ただの興味本位じゃないってことだ。どうやら、カフェを利用して王族の中で権力争いをしている者たちがいるらしい。君たちのカフェがその舞台にされるって話さ。」
リュウはその情報に驚きながらも、さらに詳しく知ろうとした。
「それって、具体的にはどういうことなんだ？誰が何を企んでいるんだ？」
男はさらに声を潜め、具体的な情報を提供した。
「名前までは知らないが、王族の中で影響力を持つ一部の者たちが、君たちのカフェを使って王女殿下を失脚させる計画を立てているらしい。彼らは王女の信頼を失墜させるために、カフェで何か問題を起こそうとしているって噂だ。」
リュウはその情報を聞いて、心底驚きと憤りを感じた。私や仲間たちの努力が陰謀の舞台にされることは、到底許せない。
「ありがとう、教えてくれて助かったよ。俺たちのカフェを守るために、この情報をしっかり伝えるよ。」
男たちはリュウの真剣な態度に頷き、気を付けろと言い残して去っていった。
リュウはすぐにカフェに戻り、私にこの情報を伝えに来た。
「菜々美、大変だ。王女の来訪は陰謀の一部だったらしい。」
私は驚きと共に、怒りが込み上げてきた。
「陰謀？それってどういうこと？」
リュウは酒場で聞いた話を詳細に伝えてくれた。
「どうやら、王族の中に君のカフェを利用して王女殿下を失脚させる計画を立てている者たちがいるらしいんだ。彼らはカフェで問題を起こして、王女殿下の信頼を失墜させようとしているらしい。」
その話を聞いて、私は怒りと共に強い決意を抱いた。
「そんなこと許せないわ！カフェを守らないと。」
リュウ、ガイデン、アリス、レオン、マークも一致団結し、カフェを守るための対策を立て始めた。私たち全員がこのカフェを愛している。この場所が陰謀の舞台にされるなんて、絶対に許せない。私の心は決意に燃え、仲間たちも同じ思いでいるのを感じた。
「まずは、どんな陰謀が進行しているのか詳しく調べよう。そして、王女殿下に直接訴えかけるんだ。」リュウが提案し、全員が同意した。
「じゃあ、どうやって調べるかを考えよう」と、ガイデンが冷静に続けた。「僕たちはそれぞれ違う役割を果たすことで、情報を効率よく集められるはずだ。」
「私は町の人々ともっと話してみるわ。お客様とも親しくなって、何か怪しい話がないか探ってみる。」アリスが自信に満ちた表情で言った。
「それなら僕は王宮周辺で情報を集めるよ。守衛や下働きの人たちとも接触してみる。彼らなら何か知っているかもしれない。」レオンが落ち着いた口調で言った。
「私はカフェの中で何か不審な動きがないか見張っておく。常連客や新しい客に気を付けながら、何か変わったことがないか見てみるよ。」マークが決意を込めて言った。
「俺はまた酒場に行って、もっと詳しい情報を集める。酒場は情報の宝庫だから、何かしら新しい話が聞けるはずだ。」リュウが力強く宣言した。
「それじゃあ、私はみんなの情報をまとめる役目をするわ。情報が集まったらすぐに整理して、次の行動を決められるようにする。」
全員がそれぞれの役割を認識し、すぐに動き始めた。私はみんなが無事に戻ってくることを祈りながら、カフェの裏でノートを広げ、情報を整理するための準備を始めた。
最初に戻ってきたのはアリスだった。彼女は興奮気味に話し始めた。
「菜々美、聞いて！町の人たちの中に、王女殿下に対して不満を持っている人たちがいるって話を聞いたわ。その人たちがカフェを利用して何か企んでいる可能性があるかもしれない。」
アリスの報告を聞きながら、私はその曖昧さに心の中でため息をついた。不満を持っている人たちは確かにいるかもしれないけれど、それだけでは陰謀の証拠にはならない。
次に戻ってきたのはレオンだった。彼は冷静に報告を続けた。
「王宮周辺で聞いた話だけど、最近、王族の中で不穏な動きがあるらしい。特に、ある貴族が権力を狙っているという噂があった。その貴族が王女殿下を失脚させようとしているかもしれない。」
レオンの冷静な報告も、確かな情報というよりは噂に過ぎない。具体的な名前や計画が分からなければ、私たちの行動も限られてしまう。
マークも戻ってきて、カフェ内の様子を報告してくれた。
「今日は特に怪しい動きはなかったけど、新しい客が増えてきてる。今後も注意して見張る必要があると思う。」
マークの報告も同様に、具体的な手がかりにはならない。それでも、彼が一生懸命に観察してくれたことには感謝している。
最後に戻ってきたのはリュウだった。彼は酒場での情報を詳しく話してくれた。
「酒場で聞いた話だが、やはり貴族の一部が王女殿下を失脚させるためにカフェを利用しようとしているらしい。具体的な計画までは分からなかったけど、何か大きな動きをする準備をしているようだ。」
リュウの報告を聞いたとき、心の中で少しだけ希望が湧いたけれど、それでもまだ決定的な証拠が欠けている。
全員の報告をまとめながら、私はノートに情報を書き込んでいたが、どうしてもその内容に自信が持てなかった。これだけの情報が揃ったとはいえ、王女殿下に訴えかけるには弱すぎる気がする。
数日後、カフェに再び王女殿下が訪れることになった。私たちは彼女に真実を伝えるため、全力で準備を整えた。
「王女殿下、ようこそ再びお越しくださいました。」
「ありがとう。今日は何か特別なことがあるのかしら？」
緊張しながらも、私はまず穏やかな会話を始めた。お茶をお出ししながら、軽い雑談を交え、少しずつ本題に近づけていくことにした。
「最近、町の皆さんから聞いたのですが、王女殿下が私たちのカフェに来てくださったことが、すごく話題になっているんです。皆さん、とても喜んでいます。」
王女殿下は微笑みながら頷いた。「それは嬉しいことですわ。私もあなたのカフェを訪れるのを楽しみにしていました。」
その笑顔に少し気を緩めながらも、私は慎重に話を進めた。「ただ、中には少し気になる話も耳にすることがありまして……」
王女殿下の表情が少し真剣なものに変わった。「気になる話？」
私は一瞬躊躇したが、勇気を振り絞って続けた。「はい、実は、町の中で私たちのカフェが何か良からぬ陰謀に巻き込まれているのではないかという噂が広まっているんです。」
王女殿下はしばらく考え込むように視線を落とした後、再び私の方に顔を上げた。「菜々美さん、言いたいことがあるなら、遠慮せずに言ってください。私はあなたの真摯な姿勢を信じています。」
その言葉に私は再び深呼吸し、腹をくくって話し始めた。
「実は、王族の中で影響力を持つ一部の者たちが、カフェを利用して王女殿下を失脚させる計画を立てているという噂を聞きました。具体的な証拠はまだ掴めていませんが、私たちはその陰謀を暴き、王女殿下を守りたいのです。」
王女殿下は驚いた表情を浮かべたが、すぐに真剣な眼差しで私を見つめた。「なるほど、そんなことが。ですが、実はこういうことはよくあるのです。あなたの言葉を信じます。そして、この件については私が対策を講じます。悪事を企む者たちには、しっかりと牽制をしておきましょう。」
私はほっと胸を撫で下ろした。「ありがとうございます、王女殿下。」
王女殿下は微笑みながら答えてくれた。「安心してください。何事も起こらないように対策を講じます。それに、あなたのカフェはとても素晴らしい場所です。これからも続けてください。」
王女殿下の協力を得たことで、私たちは安心し、カフェを守るための警戒を続けることにした。王女殿下の牽制のおかげで、陰謀は未然に防がれ、何事も起こらなかった。
「ありがとう、菜々美。あなたのおかげで大事に至らずに済みました。」
王女殿下は感謝の意を表し、再びカフェに訪れることを約束してくれた。
「こちらこそ、ありがとうございます。これからも皆さんに愛されるカフェを目指して頑張ります。」
