11. 王族の来訪
エドワードの失踪事件を乗り越えた私のカフェは、再び平穏を取り戻し、多くの客で賑わっていた。カフェの評判は町中に広まり、異世界のハーブティーを楽しむ人々が増えていた。そんなある日、カフェに予期せぬ訪問者がやってきた。
朝の開店準備をしていると、リュウが慌てた様子で私のところに駆け寄ってきた。
「菜々美、大変だ!王宮から使者が来てる!」
「王宮からの使者?何の用件かしら?」
私は驚きながらも、すぐに店の前に向かった。そこには立派な衣装を身にまとった使者が立っていた。
「こんにちは、菜々美さんですね。私は王宮から参りました使者です。王女殿下が貴方のカフェに興味を持たれ、是非訪れたいとおっしゃっています。」
「王女殿下が……うちのカフェに?」
私は驚きと共に緊張が走った。王女が訪れるとなれば、最高のおもてなしを準備しなければならない。
「いつお越しになるのですか?」
「明日の午後です。どうかよろしくお願い致します。」
使者は丁寧に頭を下げて去っていった。私はその場に立ち尽くし、少しの間、どうするべきかを考えた。
「リュウ、ガイデン、アリス、レオン、マーク!みんなに協力してもらいたいことがあるの。」
私は急いで仲間たちを集め、王女殿下の来訪に備えるための準備を始めた。
「王女殿下が来るんだって!?すごいな!」
リュウは興奮気味に言ったが、ガイデンは落ち着いた様子で対策を考え始めた。
「最高のおもてなしをするために、準備が必要だな。特別なハーブティーを用意しよう。」
「それに、店内の飾り付けも少し豪華にしましょう。」
「マーク、君はカフェの外観を整えてくれるかしら?お客様を迎える際に第一印象が大事だから、綺麗に掃除して、花壇も手入れしてほしいの。」
「わかりました。すぐに取り掛かります。」
マークは真面目な表情で頷き、カフェの外へと向かった。私はその姿を見送りながら、彼がいてくれることに感謝した。アリスとレオンも一緒にアイデアを出し合い、カフェを特別な雰囲気にするための準備を進めた。
翌日、カフェは王女殿下を迎える準備が整っていた。私は特別なハーブティーを用意し、店内を華やかに飾り付けた。リュウとガイデンは迎え入れる準備を整え、アリスとレオンは接客の最終確認をしていた。マークはカフェの外観を完璧に整え、店全体がまるで新しく生まれ変わったかのように輝いていた。
「緊張するけど、みんなで頑張りましょう!」
私は仲間たちにエールを送り、全員が気を引き締めた。
午後、王女殿下とその随行者がカフェに到着した。美しい衣装に身を包んだ王女は優雅にカフェに入り、私たちは深くお辞儀をして迎え入れた。
「ようこそいらっしゃいました、王女殿下。お待ちしておりました。」
「ありがとう。あなたが菜々美さんですね。お話はかねてから聞いております。ぜひ、あなたのハーブティーをいただきたくて参りました。」
王女の優雅な言葉に、私は緊張しながらも笑顔で応えた。
「ありがとうございます。どうぞお席にお座りください。特別なハーブティーをご用意しております。」
王女は笑顔で頷き、席に着いた。私は特製のハーブティーを手際よく準備し、王女の前に差し出した。
「こちらは、カモミールとレモンバームをブレンドした特製ハーブティーです。リラックス効果がありますので、ぜひお楽しみください。」
王女は優雅にカップを手に取り、一口飲んだ。その瞬間、彼女の表情がぱっと明るくなった。
「これは……素晴らしい味ですね。香りも良く、心が落ち着きます。」
王女の称賛に、私はほっと胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます。お気に召していただけて光栄です。」
王女はしばらくハーブティーを楽しみながら、ふと私に興味深げに話しかけた。
「菜々美さん、このハーブティーにはどのような秘密があるのですか?私たちの世界ではあまり馴染みのないものですが、非常に魅力的です。」
私は少し微笑みながら説明を始めた。
「このハーブティーは、異世界から持ち込んだハーブを使っています。例えば、カモミールにはリラックス効果があり、ストレスを軽減するのに役立ちます。そして、レモンバームは心を落ち着かせ、気分をリフレッシュさせる効果があります。」
「なるほど、それでこんなに落ち着くのですね。異世界のハーブには他にもどんなものがあるのですか?」
「例えば、ミントは消化を助ける効果があり、食後に飲むと非常に爽やかです。ペパーミントティーは特に人気で、リフレッシュしたいときにぴったりなんです。」
王女は興味深そうに頷いた。
「それは素晴らしいですね。他には?」
「エキナセアというハーブは免疫力を高める効果があります。風邪予防や健康維持に役立ちますので、特に冬の季節に人気があります。また、ラベンダーはリラックス効果が高く、安眠を促すのに役立ちます。」
王女はさらに興味を深めた様子で続けた。
「私たちの世界でも、これらのハーブを取り入れることができれば素晴らしいですね。菜々美さん、これらのハーブをどのようにして手に入れているのですか?」
「異世界に来る際に持ち込んだハーブの種を使って、この町で育てています。リュウやガイデン、アリス、レオンと一緒に手入れをしながら、カフェで使うハーブを育てているんです。」
「それは素晴らしい取り組みですね。私もぜひこのハーブを取り入れて、王宮で使いたいです。」
私は微笑みながら頷いた。
「もちろんです、王女殿下。必要なハーブの種や育て方についてもお伝えいたします。」
王女は嬉しそうに笑い、私の手を握った。
「ありがとう、菜々美さん。あなたのカフェとハーブティーは本当に素晴らしいです。これからも度々訪れたいと思います。」
「ありがとうございます、王女殿下。いつでもお待ちしております。」
こうして、王女は私のカフェとハーブティーに深い興味を抱き、これからも訪れることを約束した。私は王女との交流を通じて、異世界のハーブティーの魅力をさらに広めることができた。




