第8話 秘密兵器登場!
高校1年生、15歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
「盗っ人の影も形もねぇけど、本当に取り返せんの?」
魔王城の外。
相変わらず素晴らしい快晴と青々とした芝生のコントラストが素晴らしい景色の中。
瞳を閉じて先ほどのように指で宙に模様を描くミューティルにハルマは率直な疑問をぶつけた。
「無論じゃ」
ハルマのことなど見向きもせずににべもなく応えるミューティル。
その言葉にハルマの期待値は上がる。
「やっぱ魔法とか使って、ババーン!って見つけ出す感じなのか?」
杖を振るジェスチャーをすれば、ミューティルは肩を揺らしておかしそうに笑った。
「こんなところで魔力をつかっておったらわしの魔力はもう100年も前に尽きておるぞ?」
「一応聞くけど、お前14歳だよね?」
何千年も生きている大魔法使い的な発言をするミューティルに思わず年齢確認。
当然酒もタバコもできない14歳の少女である。
「……よし、オーケーじゃ」
ふと満足そうな顔をして、ミューティルは目を開けた。
前髪に見え隠れする瞳には、獲物を追う捕食者のように、しかし無邪気に遊ぶ子供のように、煌めく光を放っていた。
魔王の娘の片鱗が覗いている。
かなり恐ろしい。
「魔晶石が今どこにあるか分かった感じ?」
ハルマの今までのミューティルの行動から組み立てた推測は、
「いや、全くわからん」
ーーーーかすってさえもいなかった。
「…………」
「今はただ移動手段を呼んだだけじゃ。
あいにくわしは免許を取ってないから、車を運転できなくての」
「車もあるのかよ、この世界。スゲェな」
「凄いじゃろ」
得意げな顔でふんぞり返り、ミューティルはトップスのポケットをゴソゴソと探る。
「魔晶石の場所はーーーー“これ”が教えてくれる」
そう言って、ポケットからメタリックに輝くナニカを取り出す。
それは、現代日本において生きていくのに必要不可欠となったーー
「ス、スマホ、だと……?」
見覚えしかない四角いフォルムに光る画面、人類最大の文明、スマホを取り出した。
「マジでスマホなの?
ニセモノとかじゃなくて?」
「マジじゃ。魔晶石にはGPSのマイクロチップが埋め込まれておってのぅ。
このすまほさえあればどこに魔晶石があるのか一目瞭然なのじゃ」
疑うハルマに片目をつぶって応じるミューティル。
異世界文明、ここに極まれりといった様子だった。
さすが異世界がここまでハイテクとは思っていなかったハルマはただただミューティルの手に握られたスマホを凝視していた。
「……暗証番号は秘密じゃよ?」
「別にロック外そうとしたわけじゃねぇよ。
てか、GPSの話って…、
それなら魔晶石が今どこにあるか分かるのか?」
「うむ。
そうじゃなぁ……お、ここらしいぞ」
素早い動きでロックを解除し、アプリを開く。
そして地図らしきものが写るスマホ画面をスワイプして、そのままハルマに見せた。
複雑な地図の上に、魔王城らしき建物がえがかれている。
そのの中では赤や青色、緑色など色とりどりの点が点滅している。
恐らくこれが、ミューティルが先程言っていたいくつかある魔晶石のことなのだろう。
そして、魔王城らしき建物から離れた森の中に、1つの黄色い点が明滅している。
「………森の中にあるってことか?」
「そのようじゃな」
見たままな考察を述べるハルマにミューティルは頷いた。
「あとは”メルヴィル“が来るのを待つだけじゃよ」
得意げな顔をするミューティルに、スマホ画面から目を離し、空を見上げて、
「GPSって…………すげぇよな」
当たり前の事を当たり前のように呟くのだった。