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第19話 花の世界も複雑

高校1年生、16歳の天音雫です!

何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!

「ミューティルは確か、ここにいるはず……だよな?」


魔王城の3階、とある部屋の扉の前でハルマは確認するように声に出す。


というのも、かつてミューティルが、迂闊に扉を開けばとんでもないことになる部屋もあるとか何とか言ってハルマとサラを脅したからだ。


しかも実際、サラが誤ってトイレのドアを1つ間違えた時、とんでもない水の奔流がサラに襲いかかりあわや溺死寸前、という事件まであった。


……ほんの1日前の出来事である。


扉恐怖症になってもおかしくはない。

1日前の悲劇を頭を振って追い出し、大きく息を吸う。


そして鍵のかかっていない扉を、内側へと押し開ければーーーー


「ってタンマタンマタンマ!!

俺だって!!」


ヘビのように、しかしそれよりも何倍も速いスピードで伸びてきたツル草が足首と手首に絡みつき、挙げ句首にものびゆく。


絶叫すると、視線の先、多様な植物に囲まれ燐光を浴びるミューティルは首を傾げた。


「おぉ、すまんかったの。

つい最近盗人が入ったもので、警戒心がちと強くなってしもうての」


「とりあえず、ほどいて?」


ハルマの苦々しげな視線に首肯し、ミューティルは指を一振すると、


「朝食ができたということかの?」  


「あー、そう、それで呼びに来たんだよ。

もうすぐできるぞ。

ってか、相変わらずここの……植物園って言えば良いのか?凄いよな」


多種多様な花々や草木が生い茂り、ステンドグラスで囲まれたこの部屋はまさに植物園と呼ぶのにふさわしい。


問題は、ここが単なる城の一部屋に過ぎないということだ。


「わしが“生命の加護”の力がある以上、こうして毎日植物達から生命力とシンパシーを感じることが大切なのじゃ」


「植物からシンパシー感じんの?水欲しいなーとか?」


部屋の内部に踏み込み周囲を見渡すハルマの単純な疑問は、


「いや。”あの花が私よりも高い場所で咲き誇るなんて許せないわ“とかじゃな」


「意外と怖いな花の世界?!」


思ったよりシビアな世界らしい。

植物からシンパシーを感じることができなくて良かったかもしれない。


「ん、ちょっと待て、ハルマ。

あやつもお主が連れてきたのか?」 


「あやつ……って誰のことだ?」


ミューティルの問いかけにハルマは首を傾げる。


ミューティルの視線はハルマの後ろ、開けっ放しにしたドアへと向いている。


誰のことかと再び問おうとハルマが口を開きかけた刹那、


チュンチュン。


「え、スズメ?」


まるでハルマの故郷である日本の平和な朝を思い出すかのような音が聞こえた。 


一瞬にして蘇る。


高校に遅刻しそうで慌ててパンを口に突っ込んだ日。


寝癖がなおらず諦めて高校に行こうとしたらまさかの休日の朝だったというとんでもない寝ぼけをかましたあの日。


母の悲鳴で目を覚ましたあの日。

(ちなみに原因はGの出現だったらしく姉が勇敢に戦った)


「……待て、その鳥、まさか」


そんなハルマの走馬灯のように蘇った記憶の奔流は顔色を変えたミューティルの声に遮られる。


スズメはミューティルの手のひらに乗った。


足には手紙のようなものがくくりつけられている。


この時代、この異世界で伝書スズメを、見ることになろうとは。


興味を惹かれたハルマはさらにミューティルの方へと近づく。


ミューティルは珍しく不安げな顔をしてスズメの足から手紙を解いた。途端、


「……は?」


スズメの体が消えた。


代わりに、ミューティルの手のひらの上にはステンドグラスの光を反射し美しく光り輝く純白の宝石の欠片が。


「スズメがダイヤモンドに……?

そんな不可思議な原理が……

いや待て、もしこの世界のスズメが全部ダイヤモンドで出来てんなら、1羽でも俺のいた世界に持ち帰れれば、俺は大金持ちにーー」


「この世界にいるスズメは全部普通のスズメじゃよ。

このスズメだけが特別なんじゃ。………錬金術で作られた個体のようじゃな」


「ま、そんなことだとは思ってたよな。

人生そう上手くは行かないもんな、うん」


ハルマの浅はかな期待を含み笑いで断ち切り、ミューティルは視線を下げる。


「しかし……これはどうやら困ったことになったようじゃ」


「また何か面倒事か?」


声音が変化したミューティルにハルマは驚きつつも得心がいく。


こんな不可思議な現象と、不可思議な手紙があれば“何か”があることはほぼ確実なのだ。


重要なのは、それが良い方向なのか、悪い方向なのか。


ハルマは悪い方向だと推測した。理由はない。しかし、自信はある。サラのお気に入りの剣を賭けても良い。


「……まぁそんなところじゃな。

とりあえず、腹ごしらえにいくとするかの。

もう十分生命力も、シンパシーも感じたからの」


立ち上がったミューティルはポケットに手紙とダイヤモンドを一緒に突っ込み、植物園じみた部屋の外へと向かうのだった。

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