第15話 演技派の娘
高校1年生、16歳の天音雫です!
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです!
「……は?」
剣の切っ先を小刻みに震えさせ、顔面蒼白になっている盗っ人、サラ。
「そ、そんなわけ…
じゃあこの魔晶石は一体っ…?
ハッ!!ま、まさか偽物なのか?!」
信じられない顔で彼女は腰元神々しい光を放つそれを見やり、
「そうか……そうなんだな?!
私が来ることを知っていて、事前にダミーにすり替えたんだろう?!
魔王の(義理の)娘なのならばそんな姑息な手もーーーー」
「いや、それも本物じゃが。
それにわしはお主が、来ることなど1ミリも知らんかったんじゃが」
「本物だと…?!でもこれはーーーー」
「それは我が魔王城の電気の供給を担う代物じゃよ。魔王城の倒壊やわしの魔力云々には一切関係しておらぬ」
淡々とした説明に、寝耳に水を浴びたサラは絶句する。
今にも剣を落として膝をつきそうなほど生気を失った瞳にはいっそ同情すら覚えるほどだ。
「まぁしかし、電気が無いと魔王城も不便なものでのぅ。それは返してくれるとありがたいんじゃが……」
小さな手の平を可愛らしく差し出す。その可愛げのある仕草にサラは、
「……これが無いと困るのか?」
「困るのぅ」
眉尻を下げ、魔晶石無しーーーーというか電気なしの生活、その不便さを表明する。
「それはもうお主の目的にそぐわないものだとわかったことじゃし、ここは穏便に」
「な、ならば!これは返すわけにはいかない!!
魔王城が倒壊しなくても電気がなければ困るだろう?お前が困れば目標は半分ぐらい達成になるはずだっ!!」
「何いってんだ、コイツ」
大人しくやりとりを見守っていたハルマ。
非武装者らしく静かに傍観していたが、サラのよくわからない論理に流石に呆れのコメントを入れた。
彼の呆れの先、再び活力を取り戻し息を荒くするサラは両手で、しっかりと剣を握り一歩前へ出る。
「この魔晶石、奪えるものなら奪ってみろ、魔王の(義理の)娘ミューティル!」
「いちいち(義理の)ってつけるとか律儀な奴だな……
ってか、停電を目的とした強盗なんて異世界にもあるもんだな……」
「黙れ使用人!!」
「剣こっちに向けるなよ!
怖えぇよ?!」
独り言を耳ざとく聞きつけたサラが怒りと剣の切っ先をハルマへと向ける。
まるでこちらが強盗犯のように思わず両手を上げてしまう自分が情けない。
「……返して、くれないのかのぅ……?」
か弱い、The・女の子といった声音にサラは再びミューティルへと剣先を向け直す。
なんとも忙しない剣先だ。
鋭く尖った銀色の輝きを向けられ、ミューティルは迷子の女の子のように瞳を潤ませた。
そのあどけない同情を誘う顔にサラが言葉に詰まる。
「か、返してなんか」
「ーーーーなら、しょうがないのぅ」
声音が1℃、冷たくなる。サラの顔に一瞬動揺、焦り、それらの感情が表れる。
しかしその感情に従い行動を起こす前に、
「行くのじゃ」
短い言の葉、命令が空気に乗ってーーーー
「わぶーー?!」
直後、巨大な白い塊が猛然とサラへと突っ込んだ。
サラの体はその勢いにあっけなくふっ飛ばされる。
飲料コーナーを越えてお隣の野菜売り場の床に受け身も取れずに倒れ込んだ。
盗っ人への猛追を果たしたのはミューティルの相棒の魔法猫、メルヴィルだ。
コンビニの外からミューティルの声を聞きつけ飛んできたその忠実さはハチ公にも匹敵する。
いや、言い過ぎた。ハチ公の方が忠実かもしれない。
「ナイスじゃ」
感嘆と信頼を含み呟くミューティルの顔には、先程の泣きそうな顔などどこにもない。
むしろいたずらっ子のような笑みさえ浮かべている。
「……演技メッチャ上手いな」
「じゃろ」
得意げに片目をつぶる魔王の(義理の)娘、実に策士である。




