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第45話 一緒に帰ろう

(紫苑は……気分や気まぐれじゃなくて……ちゃんと……選んでくれた)


 絶対に渡したくない。その思いを込めて相手を睨んだ。


「なに? 異論でもあるの?」

「ふふっ。あの酩酊状態で無理無理」


 嘲り笑う声は、あの障子の向こう側にいた女性たちと雰囲気が似ている。

 昔からああいう同性は嫌いだった。人外だろうと何だろうと関係ない。一言言い返さなければ気が収まらない。


「……可哀想な人たち」

「は?」

「はああああ?」

「……紫苑が好むのは魂が綺麗な人たちだそうです。誰かを嫉み、貶めるような……心では魂は濁りきってさぞ酷い色をしているのでしょうね。……絶対に紫苑は、貴女たちだけは選ばない」

「黙れ!」

「負け惜しみ~。あー、本当に腹立つ」


 痛みが走った。

 けれどどこか現実味のない感覚で、罵倒の言葉が遠くで聞こえたけれど、私としては言ってやったという達成感のほうが強い。


(紫苑。……ごめんなさい。時間を稼ぐつもりなら黙っていればよかったのだろうけれど、でも……)


 紫苑が間に合わなかった時のことも考えて覚悟を決める。

 彼女たちの思い通りに何一つならず終わらせようと決意を固めていたのだが、思いのほか状況は一変する。


『外の輩は我らが抑えておる故、あの方はもうすぐこちらに来られるぞ』

「!」


 ふとよく通る声が耳に届く。

 聞き覚えのないが、労るような言葉に目頭が熱くなる。


「紫苑……っ」

「ここにいる」

「――っ、あ」


 浮遊感が消えて、次の瞬間、誰かに抱きしめられた。

 白檀の香りに抱きしめられ、薄らと人の輪郭が見える。もう一度この腕の中に戻ることができて安心したからか体が弛緩するのが分かった。


「来てくれた……のですね」

「当然だ。そなたは私の伴侶となる者なのだから。拐かされても、奪われても、たとえ――逃げたとしても連れ戻す」

「ふふっ、逃げません……よ?」

「ああ。……逃げたら悲しくて泣いてしまう」


 ふと額に温かい何かが触れた。

 紫苑の唇が頬や唇に触れる度、体の痛みが引いていく。もう大丈夫だと分かると途端に眠気が襲う。


「紫苑……全部、終わったら……一緒にお話を……」

「ああ……。私も小晴とたくさん、話をしたい……大丈夫だ。一緒に屋敷に帰ろう」


 一緒に帰る。たったその言葉が嬉しくて涙が零れ落ちた。ぎゅうぎゅうに抱きしめてこんな状況なのに、紫苑が駆けつけてくれたことが嬉しくて、幸せだった。

 酷く眠い。


(本当はもっと起きていたいのに――)

「ああ、なんて素敵な方。私のほうが貴方にはふさわしいわ」

「白蛇神様、そのような人間などよりも私なら――」

「黙れ」


 今まで聞いたこともないほど低く、威圧的な声がぼんやりと聞こえてくる。


「――っ、あああ!」

「ぎゃっ」


 短くもその言葉と精神圧によって、その場に崩れ落ちる。重力が数十倍になったかのように、跪き頭を下げた。傍にいる小鳥遊梨々花は既に失神しているのか倒れたままだ。


 視界が揺らぎ、瞼を開いていられない。

 遠くで剣戟や爆音が聞こえるのは、右近や左近さんたちだろうか。


「私の婚約者であり、未来の伴侶だと分かっていて手を出したのだろう」

「それは……っ、あまりにも……不釣り合いで、貴方様がお労しいと思って……」


 屈せずに意地を通そうとする女性の姿をこの時初めて目にする。

 目が覚めるほど美しい美女だった。

 真っ赤なに銀の刺繍を施したクラシカルドレス姿で、長い髪も艶めかしく色っぽい。大人の女性だ。しかしその目は異形のそれらしく結膜は黒く、石榴のような瞳でこちらを睨んでいた。


(怖いほど綺麗な人……)

「白蛇神様、私は……」

「私がいつそのようなことを頼んだ? あまりにも身勝手なことをしてくれたものだ」

「ひゅっ――お許し」


 悲鳴を上げるまもなく、美女は灰となって消えた。

 あまりにも一瞬でわからなかったが、人外の死とは基本的に何も残らないらしい。隣で倒れていた小鳥遊梨々花もまた灰となって崩れていった。


 ここでようやく彼女は人間ではなかったのだと理解した。あっけない幕引きとなった。紫苑が動いたからこそのスピード解決だった。


「小晴、帰ろう」

「……はい」


 そう呟いた瞬間、瞼の重さに耐えきれず目を閉じる。

 意識が完全に落ちる寸前。

 耳元で先ほどの彼女たちが嘲り笑う声が聞こえてきた。


『その呪いは、表面上は消えても魂に浸食したものは消えない。……お前があの方の伴侶でいいはずがない。呪われて死ね』


楽しんでいただけたのなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
最新話まで一気読みしました! 紫苑の大きな愛が素敵です!
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