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第40話 白昼夢の悪意

(避けられている……なんてことはない……のかな?)

「ん? あ、お嬢じゃないか」

「右近さん」

「あー、『さん』付けはいいから。お館様にだって敬称付けてないのに、俺らに付けられるとちょっとな」

「うっ……でも」

「ほら、呼んでみてくれ」

「では右近」

「そうそう」


 スケジュール管理や店関係の業務内容などの打ち合わが多いのは左近さんだが、右近は飴細工の造形に興味があるのかよく話を聞いてくれる。

 手先が器用なので、今度飴細工体験をしたいと話してくれた。何でもクリスマスに年の離れた妹にプレゼントしたいという。

 赤毛の長い髪に、不良っぽい強面の青年は黒いスーツを着こなしているが、ネクタイは外れており、ボタンも外している。


 最初は外見の迫力に上手く話せるか不安だったが、思いのほか人懐っこくて仲良くなるのは簡単だった。面倒見のいい陽気なお兄さん、という感じがぴったりだ。


「お嬢はクリスマスプレゼント、決まりそうか? ほら、お館様が忙しくてデートとかできてないって左近から聞いて……」

「あ。……はい。一つは飴細工のリキュールボンボンを送ろうと思ったのですが、もう一つ形が残る物が決まっていなくて……」

「ん~~、そうだな。お嬢一人で幽世はまだ危ないだろうし……。それに何を買うのか事態を迷っているのなら連れ回すのも……。うーん」

「ですよね……」

「二人してどうしたのですか?」


 書類の束とタブレットを持った左近さんが声をかけてきた。今帰ってきたのかキッチリとした黒いスーツに、黒縁メガネの彼はいつ見ても隙がない。


 右近が太陽のような明るさなら、左近さんは沈着冷静で神秘的な月のイメージだろうか。

 クールで事務的、人と極力関わらない雰囲気を出しているが実際に話すことが多くなると蒐集癖があり、情報通だったりする。そしてお喋りさんだ。

 クリスマスプレゼントの相談をしたところ、何処からともなくいくつかの分厚いカタログが出てきた。どこから出したのだろう。


「それでは、まずどのようなものが幽世で需要があるのか、こちらで見てはいかがでしょう」

「ありがとうございます。イラストや解説も付いていて分かり易い!」

「これで少しは幽世の知識が増やせるでしょう。……特にお守りや身につける物に加護が付いているものなど喜ばれます」

「なるほど」


 そう言って数珠やらネックレス、指輪などからハンカチなど日常で身につけやすい物や使い勝手が良さそうなものなど選びやすそうだ。


「まあ、ぶっちゃけてしまうと小晴様からの物ならお館様は何でも喜ぶかと」

「それな! その辺の石ころでも飾りそう」

(石ころって……。あー、でも何だか想像できてしまう!)


 一週間、急に会えなくなって、紫苑は私に興味を無くしてしまったらどうしよう。ふいにそう感じることがある。

 今までの溺愛ぶりは一時的なもので、物珍しいからとか興味本位だったとしても納得してしまう。神様で、あんな美貌の人なのだから。


 そう時々、そんな風に――障子の向こう側で声が聞こえるのだ。

 宴の賑わい。女の人たちの笑い声が耳に離れない。

 白昼夢のように浮かんでは消える。


『白蛇神様のお戯れもほどほどになされば良いのに』

『稀人の魂はさぞ美味でしょうから、しようがありませんわ』

『本気であのお方が人間を好きになるはずなどあるわけないのに、何を勘違いしたのかしら』

『フフッ、しょうがありませんわ』

『彼女は稀人。私たちにとってその血肉は馳走ですもの』



 声が聞こえ続ける。

 ふとした時に、障子の向こう側で笑う声が木霊して消えない。


白蛇(アイツ)が嫌になったのなら、いつでも俺が貰ってやるぞ』


 伽羅の香りがしたと思った瞬間、私は現実に引き戻される。


「――っ!?」

「小晴様?」

「あ……」


 口に、声に出して相談しようと思っても、言葉が出てこない。

 喉がカラカラで、彼女たちのことを話そうとすると声が出ないのだ。


「……幽世では『祝福の加護』や『幸運の加護』が人気なのですね。良く神社仏閣の御利益があるお守りと同じ感じなのでしょうか」

「現世よりも幽世での効果はかなり強く、それによって呪いやら禍などの障りを回避あるいは、効果の半減ができる貴重なものですね。高位であればある程度弾くことができますが、それでも加護の有り無しで自身を損なう場合もありますし、属性によっての弱点もあります」

(そっか、だからこそ加護で補填するのね。……そして紫苑が私に加護や守護者を付けたいと言い出した理由が分かった)


 幽世は秩序こそ乱れていないが、基本的には自己責任的というスタンスが大きい。抗争やら血生臭い話も聞いた後では、幽世は怖い世界でも再認識する。

 何より今、私に干渉してきている者たちは明確な悪意を向けていているのだ。紫苑の加護があるからか、直接手を出してくる気配はない。


(だから精神を削っていく感じなのかも……)


 紫苑が傍にいれば、たぶんこの手の声は弾いていたのだろう。

 離れたからこそ聞こえ始めた。


 そう思うと余計に心細くなる。

 自分は稀人ではあるが、決して強くはない。

 紫苑の庇護下にある今、紫苑と会うことが減ったことで幽世に滞在していて安全なのだろうか、と思ってしまう情けない自分がいた。


(自分の身を守るためにも、自分用に用意しておいたほうがいいのかもしれない……)


 そんなことを考えていると、思わず二人に「紫苑は今日も帰りが遅いのですか?」と尋ねてしまった。右近は「あー」と言葉を濁しつつ頭をガリガリと掻いた。左近さんは眼鏡のブリッジに触れつつ視線を落とした。


「それは――」


楽しんでいただけたのなら幸いです。

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