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【モデルは】
しかし、それでも羽音の心中は複雑だった。
「藍子が妹役かぁ……」
藍子の役者としての才能は認めている。
きっと、この役もそつなく熟すだろう。
(でも……)
音羽のお気に入りと恋人役というのは、なんとなく抵抗があった。
相手は恋の好敵手なのだ。
やはり、いろいろ考えてしまう。
「その配役は」
そこまで思った時に、真顔で薫が言った。
「自分的にも意外だった」
そして、音羽と羽音を見る。
「今回の作品は、君達二人をイメージして書いたんだが」
「えっ?」
それを聞いた音羽は、ほんわか笑顔を崩さなかったが、思わずビクッと反応してしまう羽音だった。