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【音羽の真意】
「お、おとははどうするの?」
動揺する羽音に、音羽はほんわか笑顔を浮かべた。
「出ないよ~」
「どうして!?」
それがまた衝撃で、羽音は思わず音羽に詰め寄った。
「中学最後の文化祭だよ!?」
「だからだよ~」
しかし、音羽はほんわか笑顔を崩さずに言った。
「最後だから~、脚本と演出に専念したいの~」
音羽は、元々文学少女で、演劇の演出家、脚本家を目指していた。
中等部に上がって直ぐに演劇部に入ったのも、演出と脚本の勉強をするためだった。
だが、その時の部長に演技の才能を見いだされ、自分で演技をやる事になったのだ。
それは二年生になっても続き、上級生が引退して部長になって初めて、本来の志望だった演出と脚本をやれる事になったのだ。
「そういうことか……」
その説明に納得するしかない羽音だった。