7/249
【見分け方】
「すっごーい!」
お弁当箱を開けながら琴美は興奮気味に言った。それに対して音羽は慢心の笑みを浮かべ、羽音はちょっと照れくさそうにしながらもやはり満更でもなさそうだった。
時はお昼休み。所は中庭。琴美の誘いで三人はそこでお弁当を食べることにしたのだ。
「本当に誰も気付かなかったね! さすが演劇部」
「アレやると、お母さんだって見分けがつかなくなるからね」
卵焼きをフォークで刺しながら、羽音は言った。
「でも~、お腹、触られると直ぐにわかっちゃうんだ~」
わたしの方がお腹ぷよぷよだから~、と言いながら音羽は制服の上から自分の腹を摘んだ。それから今度は手を胸に持ってきてなにかを言おうとする。
「あと~、おっぱいの大きさでも~……」
「わぁーっ!」
しかし、その言葉は羽音の悲鳴に遮られた。
「余計な事は言わないのっ!」
サイズこそ同じCカップだが、自分の方がほんの少しだけ胸が小さい事が級友に知られそうになり、慌てて姉を窘める羽音だった。