66/249
【役割分担】
「そんなことないよ~」
羽音は大変お冠だったが、音羽は全然気にする様子もなく笑顔のままでおっとりと首を横に振った。
「わたしも~、ちゃんと自分の役目、果たしてたよ~?」
それから妹を見詰めて、やんわりと力説する。
(…………はぁ)
羽音は、心の中で強く溜息をついた。確かに最初は音羽も一緒に酒肴を作っていた。けれども、それを母の元に持って行ったまま戻ってこなくなり、気が付くと、母と共に飲み食いに興じていたのだ。あれで役割を果たしていたとはとても思えない。それでも、疑いの眼差しで姉を見つつ、念の為、聞いてみた。
「……役目ってなによ?」
と、音羽は、慢心の笑みをにっこり浮かべて言い放った。
「お酌~」
「……」
自信満々で微笑む音羽に、ストローを口にしたまま冷汗笑いで膠着する琴美と、目眩を覚えたように頭を抱える羽音だった。