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【母の職業】
肉が二重に乗ったハンバーガーを美味しそうに頬張ってから、思い出したように音羽は付け加えた。
「お母さんのお仕事~、手伝って貰ったお駄賃とかも~、足してるよ~」
「えっ? 二人の家って、お店やってるの?」
すかさず、ポテトに手を伸ばそうとした琴美が反応する。
「ううん……そうじゃなくって……えーっと…………」
すると、羽音がちょっと困った顔をした。それから考え込む。どう説明したらいいだろう? そんな仕草だった。
「お母さんはね~、相場師だよ~」
が、そんな妹の思案もお構いなしで、またもや音羽が事実をそのまま告げる。
「そ、そうばし?」
案の定、琴美は始めて聞く単語に戸惑っている。
「うん~」
「いや……それじゃあ、絶対にわからないって」
ほんわか笑顔で頷く音羽に、呆れながらツッコミを入れる羽音だった。