62/249
【お願い?】
「音羽ちゃんって本も読むよねぇ? やり繰りとか、大変じゃない?」
一口、ジュースを口にしてから、琴美は聞いた。作家志望の音羽は読書家でもあり、休み時間によく本を読んでいるの知っていたからだ。
「そうでもないよ~。本は、図書室から借りてるから~」
ほんわか笑顔で答えてから、音羽は感慨深そうにしみじみと言った。
「最近は、読みたい本も直ぐに入るし~」
「いや……」
が、その言葉に羽音が静かに異論を唱える。
「それは、おとはが図書委員を誑し込んで、入れさせてるんでしょ?」
そして、ムッとした顔で自分が知っている事実を音羽に突き付けた。
「誑し込む!?」
「そんなことしてないよ~」
琴美は驚きの声を上げたが、音羽はほんわか笑顔のままできっぱり否定する。
「ちょっと抱きしめて、お願いしてるだけだよ~」
「…………」
自信満々でにっこり微笑む音羽に、呆れて物も言えなくなる羽音だった。