【ただいま授業中】
「Let's just see. Let's test the reaction time of your brand new mobile suit.」
静まりかえった教室で羽音の読み上げる英文だけが響いていた。窓際で背筋を伸ばして立ち、凛とした口調で教科書を読み上げる羽音は、少女というよりもむしろ少年のようにも見えた。実際、級友達の中には、まるで美男子を見るようにうっとりと眺めている娘もいる。
「はい、そこまで。次は……音羽さん」
「はぁ~い」
教師の声に羽音は言葉を止めて席に着く。入れ替わりに教室の入り口付近の席から音羽がゆっくりと立ち上がった。
「Nobody ever likes to admit, to mistakes due to his own youth.」
柔らかな仕草で教科書を持った音羽は、いつものごとく口元に軽く笑みを浮かべながら、ゆったりとした口調で英文を読み始めた。その姿はまるで慈愛に満ちた女神のようにも見えた。羽音とは別の意味で級友達は憧れの眼差しを音羽に向けていた。
(…………本当に誰も気付いてない)
しかし、ただ一人、琴美だけは心の中で冷汗笑いをしていた。今、教科書を読んでいるのは実は羽音で、自分の目の前に座っているのが音羽だというのを知っていたからだ。
音羽の言葉通り、双子の演技力を見せつけられて感服するしかない琴美だった。