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【品定め】
すっかり上機嫌になった羽音は、スカートをちょんと摘んで持ち上げると横を向いたり後ろを向いたりして鏡越しに自分の姿をいろいろな方向から確認し始めた。
「ふふふんん……♪」
口元に自然と笑みが浮かび、鼻歌まで口ずさんでいる。
(はのんちゃん~、なんか凄く嬉しそう~)
そんな妹の姿を、音羽も嬉しそうな笑顔で見詰めていた。その瞳は、まるで可愛い娘が与えたプレゼントを喜ぶ姿に見とれる父親のようだった。
「…………」
少し思案する。そして、決断した。
「よし~! 決めた~!」
ほんわか笑顔で宣言した音羽は、おもむろに羽音の後ろに回ると両肩を掴む。羽音の顔の横から自分の顔を出して、にっこり微笑んだ。
「これにする~」
「あ、あたしのぉ?」
突然、頬と頬をくっつけられたところに、自分の着ていた服を音羽が選んだことで二重に不意打ちを喰らい、本気で驚いてしまう羽音だった。