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【双子伝説】
「お、おとはっ!」
「初等部の頃ね~」
慌てた羽音を無視して音羽は琴美に説明を始めた。
「体育で徒競走のテストがあったんだけどぉ~……」
それは初等部五年生の時だった。運動が嫌いな音羽にとって体育は天敵だった。
「わたし~、走るの苦手だから~、その時クラスが別だったはのんちゃんに~……」
それに対して羽音は運動神経がよく体育は得意科目だった。なので……、
「入れ替わってもらっったの~」
音羽はあっけらかんと言い放った。それを聞いた羽音は、取り繕うように抗議した。
「あ、あれはおとはが無理矢理……」
「え~っ~!」
しかし、逆に音羽が不満そうな声を上げる。
「わたしもはのんちゃんが苦手な国語の小テスト~、代わってあげたのに~」
「そ、それはっ……!」
「……常習犯だったんだね」
反論する音羽に口ごもる羽音。それを見ながら冷汗笑いをするしかない琴美だった。