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【遅れた理由《わけ》】
「へぇー、羽音ちゃんでも寝坊するんだぁ?」
双子のやりとりを聞いていた琴美は、意外そうに言った。琴美の印象では、羽音はそういうところはキチンとしていると思っていたからだ。
「普段はそんなことないんだけど……」
すると羽音は、ちょっと困ったような表情をする。
「昨日の夜……いろいろあってね…………」
それから疲れたような顔で肩を落としながら、しみじみと言った。
「そーなんだぁ」
その言葉に妙な実感がこもっていたので、それ以上はなにも聞けず、ただ頷くしかなかった。
「音羽ちゃんは、起こしてあげなかったの?」
なので今度は音羽の方へと話を振る。
「え~っ~? わたし~?」
聞かれた音羽は、ちょっと驚いたように自分で自分を指さした。それから慢心の笑顔を浮かべると、自信たっぷりに言い放った。
「わたしが~、はのんちゃんより先に起きれる訳、無いよ~」
とっても駄目なことを言っているにも関わらず、思わず納得してしまう琴美だった。