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【その夜】
楠家の双子の部屋では、フリフリのネグリジェ姿の音羽が、机の前でノートパソコンと睨めっこしていた。
「う~ん~…………」
「どうしたの?」
悩むように唸る姉に、シンプルなデザインのパジャマを着て、フローリングの床の上で柔軟体操をしていた羽音が首を傾げる。
「脚本、ちょっと直そうかな~」
振り返った音羽の言葉に、羽音は体操を止めて起き上がった。
「今からぁ?」
公演は今週末。この土壇場で脚本修正などほぼ不可能だ。それでも念の為、聞いてみた。
「どこ、直すの?」
「今日やったところ~」
と、音羽は、いつものほんわか笑顔を浮かべて、思案するように言った。
「やっぱり~、ちゅう~、入れようかな~、って~」
「却下!」
まだ懲りてない姉を全否定するように、速攻でツッコミをいれる羽音だった。