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【伝えたい気持ち】
「さっきのアレ、本気だから」
「えっ?」
急に真剣な面持ちになった夕貴に詰め寄られて、藍子は戸惑いの声を漏らす。しかし、直ぐにそれが稽古中の、夕貴の告白の事だと気づいた。
「うん……わたしも夕貴ちゃんの事、好きだよ」
ちょっと照れくさそうな笑みを浮かべながら、藍子は噛みしめるように言った。その言葉と仕草の愛しさに、夕貴は胸をどきっとさせる。が……、
「だって、大切なお友達だもん」
「!!」
夕貴は、大きく目を見開いた。衝撃の余り固まった身体に、パリンっと音をたてて大きなひびが入ったような気がした。
「……あれ? どうしたの?」
そのまま腰砕けになった夕貴を見て、藍子は不思議そうに首を傾げる。なにもわかってない、そんな顔だった。
「…………なんでもない」
藍子が、こういう娘だったことを思い出して、脱力するしかない夕貴だった。