【副部長、出撃】
「部を活動停止処分にしたいの?」
目を三角にした羽音は、音羽を指さして説教した。一応、お嬢様学校なので、不純異性交遊には厳しい。そんなシーンを入れれば、例え劇でも問題になるだろう。
しかし、音羽は悪びれた様子も見せずにてへっ、と笑うだけだった。
「夕貴も、のせられない」
姉の態度に呆れながら、羽音は夕貴の方を向くと視線で小突いく。
「すみません、副部長……」
少し冷静になり、自分がどれだけ大それた事をしようとしていたか自覚した夕貴は、本当に済まなそうに頭を下げた。そのヘコミ具合を見て充分だと思った羽音は、表情を緩めてから改めて夕貴を見た。
「まぁ、確かに夕貴はもう一歩、踏み込んで演技してもいいとは思うけどね」
さすがにキスはマズイけど、と副部長として、そして、男役の先輩としてアドバイスしする。
それは既に夕貴もわかっていた。音羽の演技を見た後だと、今まで自分の演技は淡泊に感じてしまう。だが、それを認めると恋敵を認めるのと同じになりそうで、抵抗があった。
「副部長がそう言うなら……やってみるよ」
なので、羽音の言葉なら、と自分を納得させ頷く夕貴だった。