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【おあいこ】
「先生に言われたんだ」
羽音は報告も兼ねて、語り始めた。
「京都は道路事情が悪いって」
今日のことを考えるとまだ胸が痛くなる。
「だから、これは完全な下調べ不足」
なので、羽音は本当に済まなそうに言った。
「初めから地下鉄を使えば良かった」
後悔の念が羽音を包み込む。
「ごめんね」
そして、今日何度目かわからない謝罪を口にする。
「そっか・・・・・・」
そんなに謝らないで、と琴美は思ったが、今それを言うのは違うと思った。
「なら、おあいこだね」
代わりに、そんな言葉が口から出た。
「うん」
それが心にしっくりきたから、素直に頷く羽音だった。