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【いきなり佳境《クライマックス》】
講堂の舞台の上には体操着姿の藍子と、同じく体操着を着た二年生部員の野神夕貴が立っていた。ショートカットの髪と気が強そうな顔立ちから、まるで男の子のように見える少女だ。今回の舞台では、夕貴が主人公の少年を、藍子がヒロインの少女を演じている。
「……私はあなたの事が好きなんですっ!」
藍子は、夕貴に向かって今にも泣き出しそうな表情で訴えかけた。
「僕だって、君の事を……!」
それに対して夕貴も、両手を大きく左右に広げて、自分の気持ちが相手に伝わらない苛立たしさを露わにしながら訴えかけようとする。
「きっと君が僕を好きになる前から、ずっと好きで……」
「はぁ~い、ストッ~プ~」
が、その台詞を音羽のおっとり声が遮った。
演技を止めた夕貴と藍子が声のする方向――講堂の最前列の席を見ると、ちょうど音羽が椅子から立ち上がると事だった。
「えーっ!」
渾身の演技を中断させられて、思わず不満そうな声を上げる夕貴だった。