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【音羽の本命】
食事を堪能していると、お座敷に舞妓が入ってきた。
「~!」
それだけで、音羽はテンション最大になった。
「どうどう」
興奮して今に飛んでかかりそうな姉を羽音は必死になって押さえ込む。
「おおきに、駒子どす。よろしゅうおたのもうします」
駒子という名の舞妓が畳に正座し、頭を下げる。
つられて羽音、琴美、それに薫が頭を下げた。
「・・・・・・~」
しかし、音羽だけはそんな動作のひとつひとつを目に焼き付けんとばかりに、駒子をじっと見詰めていた。
それから駒子は、演舞を披露し始めた。
「綺麗~」
ここでは音羽も興奮を抑えて、優雅に踊る駒子をうっとりとした顔で見入っていた。
「・・・・・・」
そんな姉の様子に複雑そうな表情をする羽音だった。