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【そして、入浴】
旅館の風呂場には小さな天窓があった。
生憎、雨が打っているので夜空はうかがえない。
「綺麗な夜空だね~」
しかし、それを眺める音羽は、心にもないことを言った。
「そうだね」
そして、羽音も上の空で答える。
「ねぇ~、はのんちゃん~」
風呂の壁を見ながら音羽は聞いた。
「なに?」
音羽の後ろに座った羽音は、首を傾げた。
湯船には音羽と羽音だけが入っていた。
その背中で他の級友達は、洗い場で身体を洗っている。
「後ろ~、振り返っていい~?」
音羽は下から目線でお願いした。
「絶対駄目!」
しかし、その要求を断固として突っぱねる羽音だった。




