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【その日の夜】
その日の夜。
楠家では、リビングで音羽がドラマを見ていた。
音羽はドラマは積極的に見るようにしている。
脚本と演出の勉強になるからだ。
基本はリアルタイム視聴だが、裏番組と重なる時はビデオも活用する。
本当はすべてリアルタイムで見たい。
その方が見る時の集中力が増すからだ。
そして、今日もお気に入りのドラマをリアルタイムで見てから、自分達の部屋がある二階に戻ってきた。
「あ~、面白かった~」
ドラマの余韻に浸りながら、部屋へ入る。
「えーっと……」
すると、羽音が机の上に置いてあるノートPCで、なにやら熱心に作業していた。
「えへへ……」
それを見た音羽は、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
そして、こっそり後ろから近付く音羽だった。