『旅と道連れ』
それは五月も半ばの事だった。
私立山手女学館、三年伍組の一時限目は、LHRだった。
「では、今から修学旅行の班決めを行います」
教壇に立った担任の三代円は、教室中をぐるりと見渡した。
背中まである黒髪を両サイドだけ後ろにまとめて、つぶら瞳とほっそりとした顔とした女性だ。性格は明るく親しみやすく生徒からの人気も高い。
「一班は四人つづで、決まったらメンバー表を書いて提出してください」
それを聞いている生徒達は、さっきからソワソワしていた。
修学旅の行先は京都。
期間は、来月の頭から二泊三日の予定だった。
「それでは始めてください」
円の声に、生徒達は一斉に席を立って、おのおの友達のところへと集まる。
「?」
立ち上がろうとした楠羽音は、背中を突かれて後ろを振り返った。
「羽音ちゃん」
そこでは夏川琴美が明るい笑みを浮かべていた。
「一緒の班になろうよ」
「いいよ」
琴美の言葉に羽音は頷いた。
「おとはもいいよね?」
それから席に寄ってきた楠音羽に聞く。
「いいけど~」
音羽はほんわか笑顔を浮かべた。
「軍曹ちゃんも誘っちゃったけどいい~?」
遅れてやって来た児玉薫を、チラッと見てから音羽は問い掛けた。
「もちろん!」
琴美は二つ返事で快諾した。
「よろしく頼む」
薫は真顔で頭を下げた。
琴美は、最初に考えていたとおりの班になって、全く同じ顔の音羽と羽音を見ながらニコニコと笑みを浮かべた。
音羽と羽音、二人は双子姉妹だった。