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Olivia 〜オリビアと国を守るもの〜  作者: カトリーユウコ
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ーオリビアの町おこし作戦1ー



ーー翌日。


 オリビアとメリッサは町娘に変装し、問題の街へと来ていた。

近衛団から数名の護衛が、何処かに隠れて見守っているようだが…オリビアにはお見通しであった。


 ずっとどこかの店で、何も買いもしないのに品物を手に取って見てる者。

酔っ払いのフリをして路上に座り込んでいる者。

ランニングしたり筋トレしながら、常に視界の何処かにいる者。



 確かに豊かな街並みでは馴染める者であろうが、この街は貧困化が激しく、町民は何とか食いつないでいるような状態だ。



ーーさて、問題の事件だが、書類によるとこの1ヶ月で乱闘事件多数、町の汚染化も進み、餓死者も増えていると…


 確かに、町中は至る所にゴミが広がり、綺麗とはかけ離れた町である。



 オリビアは驚いた。この国へ来た時にはとても美しく、煌びやかな街並み、楽しそうな人々ばかりだった。


 少し離れただけでこの差だ。こんなに貧困差が激しいのも珍しい。



 お城の環境省の取り組みによると、町への給付金の上乗せ、ゴミを捨てた者への罰金制度。

貧しい人でも買いやすいよう物価の値下げ、怪我、病人への治療費の免除など…

 

 六日でここまでしたのは確かに素晴らしい。

どれも手続きなどで時間の掛かるものばかりだ。



 だが、その努力も虚しく、それらの対応が招いた結果は…



 ただでさえ給付金の少なかった町長による給付金の横領…


 ゴミを捨てたものへ罰金と言うのも24時間取締ることは難しく、結局はゴミも減らず、人件費だけが重なり…


 物価の値下げをしたものの、もともと買うのを我慢するのに慣れてる貧困者達にとって、安くなったからと言って爆発的に購入者が増えるわけでも無く、店側の収入の減少による倒産危機…


 怪我人や病人への治療費免除は、確かに死者数は減らせたが、暴力騒動、栄養失調、環境汚染による病気などの根本的問題が解決されてない為、患者数が減る事は無かった。



 その書類を見てオリビアは、この状況から抜け出し、豊かな町になり喜ぶ町民を想像し、期待に胸を躍らせていた。



「さぁ、時間がないわ。今日は情報収集よ!メリッサ!」


「はい!オリビア様!」



 二人は気合を入れて、その日は日が落ち暗くなるまで、食事を取ることを忘れ歩き回っては情報収集をした。



「メリッサ、最後に町民の集まる場所を調査よ!」


 オリビア達はそう意気込むと、町で人気の安い酒場へと向かった。


「いらっしゃい。あら、あなた初めましてね」


「ええ、旅行でアリスタを回っているんです〜」


 メリッサが町娘になりきり、軽い口調で返す。

私たちは車椅子があるため、テーブル席を勧められたが、店主と話したかった為、オリビアは少し高めの椅子に腰掛け、車椅子をたたんだ。


 店主という方は、この町で見た人の中で一番ふっくらしていた。

皆、栄養失調で痩せ細り、化粧なども高級品としてろくにしてる人もいない中、この店主は男性ながら、化粧をしていた。

 頭はスキンヘッドで、店のライトが反射して光っている。

オリビアは男性で化粧をし、女性口調な人を始めて見たが、不思議と違和感なく、場に溶け込んでいた。



「も〜やだなぁ〜、マスターそんなに褒めないでくださいよ〜」


「だってぇ、オリビアちゃん、他には見ないべっぴんさんだもの〜

 お化粧も綺麗だし、いいとこのお嬢ちゃんじゃないの〜?」



 ギクッ



 さすが、酒屋の店主。観察眼は人並み以上に優れている。

口調も崩し、服も以前エトワールの町民からいただいた手作り品だと言うのに、その中に秘めたる品を嗅ぎつけたのだ。

 化粧だってほぼしておらず、頬紅と口紅ぐらいしか目立つところはないだろう。



 だが、オリビアの陶器のように滑らかで、ガラスのように透き通った肌は、多少化粧をしていなくても、風格に華を持たせるのであった。


 オリビアは、瞬時に目の前の人が協力してくれれば心強いと判断した。



「確かに、教養はありますが…私はとてもとても小さな国で生まれ、一時はこの町の方々の様な姿をしておりました」


 オリビアは口調を戻し、一枚の写真を差し出した。


 それはオリビアが復興させた町の少女と撮った写真である。

成長した体に合わせて作った、つぎはぎのドレスを着て、体は痩せこけ、肌も潤いを失っているオリビアの姿があった。



「あら、これ貴方なの?あなたも苦労したのね…


 私もこの店始める前はとても貧しくてね…同級生の中でも一番小柄でね。

父が亡くなってから、女手一つで育ててくれた母も三人の子どもに全てを与えて、自分は早くに栄養失調で亡くなってしまったのよ。


 最近、病院の治療費免除が始まったんだけど、今、母がいたら生きてたのかなって思ってしまう時があるのよね」



 今までの楽観的な彼の口調とは異なり、なにかを思い返している様な悲しげな表情を浮かべていた。


ーー本当、オリビア様は、人の心に入り込む事がお早い事…


 メリッサは心で、しみじみとそう思っていた。



「そうでしたか。

でも、あなたはこの街が好きなのですね」


 そう言って、オリビアは優しく微笑むと、彼は驚き、力なく笑った。


「そうねぇ。やっぱり生まれた町だからね…いつか何とか出来ないかとは思ってるよ」



 彼は手元の洗い物に視線を戻しながら、叶いもしない夢を唱えるかの様に語った。



「私ったら、まだ名前言ってなかったわね、マイケルよ。

よろしくね」


 そう言ってマイケルはニコッと穏やかに笑って見せた。


「マイケルさんですか。素敵なお名前ですね。

大丈夫。マイケルさん、この街は私が救います。


ただ、あなたにもご協力願いたいのです」



 そう力強く口にしたオリビアは、いつの間にか飲み終えたウィスキーのグラスを前に突き出した。



「…オリビアちゃん、あなた一体何者なの?」



 驚いたのも束の間、マイケルは疑いの眼差しをオリビアに向けた。


オリビアはその瞳に屈する事なく、ニコッと微笑んでいた。



「私はエトワールという小さな国の王女です。

先程お見せした、笑顔の女の子は、私と町の人々と協力して復興させた町の娘です。


 そして、私はこの国を変える為、この国の王子に嫁いで来ました。

隅々まで、笑顔が溢れて観光客の訪れる温かい国にしましょう」



 オリビアはそう言って、マイケルの手を取ると、決意を表すかの様に力強く握り、期待に満ちた眼差しを向けた。



 その眼差しをみて、マイケルは不思議な力が漲ってくる様な気がした。



「国を変える…か。それは嬉しい事だけど、あなた何をするつもりなの?」


 マイケルは、上の人間が嫌いだった。自分たちだけいい気分を味わって、下が苦しんでいるのになんか目もくれない。


 だから、マイケルはオリビアを信じる事が出来なかった。

 マイケルはオリビアを試す様な口調で、やりとりを続けていった。



「そんな、恐れ多い!私一人ではどうも出来ません!

 皆の協力があってこその復興ですから。

仮に一人で成し得ても、崩れるのは一瞬です。


 皆がそれぞれ、自分がやったという意識こそが、良い街づくりになるのですから」


 オリビアは毅然とした態度で答えると、マイケルはまた考え売り言葉を返してくる。



「こんな、自分たちの生活で手一杯のもの達が、手伝うかね?」


「私は長年信頼を得て、復興を成し得ました。

ですが、この国は広く、すぐに信頼を得るのは難しいでしょう。


 だから、マイケルさん、あなたにこの町の復興の皮切りを頼みたいのです」



「どういう事?」



「情報通達係とでも言いましょうか。

後はどう動くかは皆様次第ですから、まずは私と町民の仲介に立っていただきたいのです」



「私がすると言う確証なんてないし、上の言いなりになるなんてまっぴらよ」


「いいえ、あなたは協力してくれます。

そして、町のみんなも」



 マイケルがこれだけ、疑惑の目と拒絶の意思を露わにしているのにも関わらず、オリビアはぶれず、自信に満ち溢れていた。


 倍以上生きているマイケルでも、オリビアから溢れ出る天然の自信に、気迫負けしそうなぐらいであった。



「なぜそう言い切れるのかしら?」


「だって、あなたはこの町が好きでしょう?

皆だってそう。この町に残っている者達は、苦労し、どれだけ憎んでも、この町に詰まっている思い出までもは憎めないのです。


 人とは皆、どれだけ辛くても、良い思い出は心の奥で光り続けているものです」



 オリビアは苦労した過去の思い出と共に、人々の笑顔を思い出しながら語った。


 妙に説得力のある言葉は、皆まで言わずともマイケルの心には届いていた。



「分かったわ。私の負けよ。

それで?何をしたらいいの?」


「そうですね…まず、人々の心に余裕を持たせるのに、一番効果的で手っ取り早いもの、お金です!」








小説家になろうさん用の長さに、原本をコピペして空白調整、コピペして空白調整を繰り返しております笑


懐かしい作品を見返してみると、今書くと違う表現になるかなと思うところもありつつ、手直しはあえてせずにわくわくと当時の私の言葉たちを噛み締めてます( ̄∇ ̄)


皆さんが楽しんでくださってると幸いですm(_ _)m

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