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Olivia 〜オリビアと国を守るもの〜  作者: カトリーユウコ
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ー愛されオリビアの幼少期ー



 オリビアが顔を上げた瞬間、より一層高まる国民の歓喜は、王族の住む町全体を揺らす勢いで響き渡った。



「わぁーー!!王女さまー!!」

 街の子ども達が事前に打ち合わせをしていたかのように一斉に細く甲高い声を張り上げた。



「王女様のパンを作ったの〜」

 町一番のパン屋のマリーは大きなバケットいっぱいに入った、オリビアの顔を再現したのであろうパンを掲げて叫んだ。



「王女様、こっちにも手を振ってくれー!」

 服屋の老店主ジャックも、年甲斐もなく大きく右手を左右に振り、左手を口横に添えて震える声を出来る限り大きく絞り出した。




 そんなみんなを前にし、オリビアのきつく結んでいた口元がふっと緩み、大きく上げた睫毛を再び下ろし、薄く横に目を伸ばした。

ほっとしたように微笑むオリビアは、肘をあげ、90度に曲げたまま手を左右にゆっくりと振った。



 見える範囲の全ての人と目が合うようにぐるりと方向を変え、手を振り続けた。




 背後では、父であり、エトワール国王であるエリックと母であり王妃であるエリザベスを筆頭に、

オリビア付きのメイド長メリッサと二人の兄であり、王子のオスカーとアレックス、執事長のセバスチャンが、少し寂しそうな笑みを浮かべ、オリビアの背中を見守っていた。




「あんなに小さかったのに…」


 そうぼそっと呟いたエリザベスの言葉で、背後の皆の張り詰めた緊張の緒が切れ、皆がそれぞれ頬に涙を伝わせた。


 この押し殺した寂しさから溢れでた母の一言が国民に届いていたら、おそらく国民も同じく涙しただろう。


 それだけオリビアはこの国の皆にとって、とても、とても大切な存在なのである。

そして、それだけ想われるのにも理由がある。



 きっかけはオリビアが12歳の時である…が少し遡って昔のオリビアを覗いてみよう。









ーーーーーオリビア5歳のある日。



「「オリビアー! 今日も出掛けるぞー!」」


 廊下に響き渡る二色の声色は、オリビアの兄、オスカーとアレックスのものである。

第一王子のオスカーは8歳でオリビアの三つ上、第二王子のアレックスは6歳でオリビアの一つ上である。


 二人の兄はとてもわんぱくで、近衛団の武術特訓が終わった後は、決まって可愛い可愛い妹と遊んでは癒されているのである。


 俗に言う、シスコンというやつだ。



 まあ、人懐っこく、明るく活発で、少し天然で絶世の美少女であるオリビアを妹にもっては、誰でもシスコンになるであろう。



「あー!! まってお兄さま! メリッサ、もうおわる?」


「あらあら、またお出かけですか? 本当仲が宜しいですね。ふふふっ」


 オリビアは今、お付きのメイド長メリッサに髪をセットしてもらっていたのだ。

ふわふわの綺麗な天然パーマの髪はお尻まで伸びており、クシをとくにも一苦労。


 メイド長メリッサはオリビアの髪をいじる日々のおかげで、当時18歳にして既に、プロの美容師並みの技術を身に付けていた。



「本当にオリビア様の御髪は、クシを通すたび艶が増して、お手入れさせていただくのがいつも楽しみですわ〜」



 メリッサはふんふんと鼻歌を歌いながら楽しそうに、オリビアの髪をいじっている。



「おぐし?? なにそれー? んもう、メリッサたら、わたしのかみの毛であそんでるでしょー?」



 メリッサから発された、まだ聞き覚えのない難しい言葉に首を傾げたと思ったら、次の瞬間にはぷくっと頬を膨らまし、大きな瞳で精一杯鏡越しにメリッサを睨みつけるオリビア。



ーーそんな顔で見られて、恐怖を感じる者なんか、この世に一人もいないだろう。

 メリッサは心の中でそう思いながら、満面の笑みを浮かべてオリビアを見つめ返した。





「「オリビアー、先に行っちゃうぞー!」」


 メリッサがオリビアで遊んでいる間に、もう一度廊下に兄二人の声が響き渡る。



「あーー! メリッサ! もういいでしょう? わたしいってくるね!」


「ああ! お待ちください! 外に出られるのでしたらせめてこれだけ!」


 そう言ってメリッサは、腕の中で暴れる猫を大人しくさせるかの様に、焦って走り出そうとするオリビアの脇の下に手を突っ込んでそっと抱えあげ、もう一度ドレッサーに座らせた。


 大人しくなったオリビアに、ヘアアレンジが出来なかったからと、赤いリボンを取り出し、髪をまとめ、頭の上でリボン結びをした。



「こんな簡単なもので残念ですが…」


「かわいいーー!! ありがとう、メリッサ!!」



 そう言って、メリッサの頬に軽くお礼のキスをすると、オリビアはそそくさと兄の待つ方へ音を立てて走っていった。



「オリビア様ったらなんて可愛らしいのかしら…本当オリビア様が生まれてから王様も王妃様もお顔立ちが優しくなり、王子様も使用人もみんなオリビア様にメロメロですわ。

 お城の雰囲気を一気に和ませるなんて、凄いお力をお持ちですわ」


 メリッサはオリビアの部屋を片付けながら、足早にお城を出て行くオリビアたちを見つめながら呟いた。




 数時間後、オリビアたちがお城に帰ってくると、いつも決まってエリザベスが第一声をあげる。



「まあ!!あなたたち、またこんなに泥だらけになって!!

 本当どんな遊びをしたら、こんなにいつもいつも泥だらけになって帰ってくるのですか!?」



 帰って早々エントランスで怒られている三人を見て、お城の人間は王と王妃以外、皆微笑ましくその光景を眺めているのであった。





ーーーーーー

ーーー


ーー…




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