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第七話 友人との女子会ですね。


 あれから2ヶ月が経ち、遂に湊二郎様の受験当日となりました。

 私は湊二郎様が受験本番で全力を出せるよう、健康に良いものを作りました。



「今日は朝から凝ってるな」

「はいっ、湊二郎様の大切な日なんですから。しっかり食べて、全力を尽くしてくださいね」

「そうか。ありがとな」



 私は湊二郎様と共に朝食を済ませると、私は湊二郎様を玄関まで見送りました。



「本当にここでよろしいのですか? 学校までお送りするのですが……」

「いや、大丈夫だ。発表まで待たせる訳にもいかないし、心雪も疲れるだろ? 必ず合格通知貰ってくるから、ここで待っててくれ」



 湊二郎様は私の頬を撫でると玄関の扉を開けました。



「行ってらっしゃいませ。湊二郎さまっ」

「ああ、いってきます!」



 私は湊二郎様を手を振って見送り、玄関を閉めました。

 では私も湊二郎様のために掃除と洗濯をしましょう。


 着物を紐で結び、その日の家事を仕上げます。今日の具材は昨日のうちに買ってあるので出掛ける必要もありません。



「遅いですね……」



 時間を確認するとまだ牛の刻にもなっておらず、昼食の時間までかなりの時間がありました。

 特にすることもないので柚葉ちゃんの家に行こうと考え、身じたくを済ませて玄関を出ると柚葉ちゃんと会いました。



「柚葉ちゃん、奇遇ですね。ちょうど会いに行こうと思ってたところですよ」

「お主もか。考えることは一緒じゃな」

「そうですね……」



 私は苦笑いをしながら柚葉ちゃんを家に入れます。

 柚葉ちゃんも多久郎さんが不安で仕方ないみたいですね。



「はいっ、お茶ですよ」

「おう、すまんな」



 私は柚葉ちゃんにお茶を淹れて、テーブルに座りました。

 そして、柚葉ちゃんとお茶を飲み、一息ついたところで女子会の始まりです。



「こうして二人で飲むのも随分久しぶりじゃな」

「そうですね。最後に飲んだのは80年前のことでしたからね」

「今だから言えるが、お主が突然と消えた日に妾は三日間探したぞ」



 私は苦笑いをしました。

 あの日私は別れが寂しくて無言で去ってしまったんですよね。柚葉ちゃんには申し訳ないことをしてしまいましたね。



「私だって黙って出てしまったのを後悔して紗由理様と初めてお会いした日の夜は一晩中泣いたんですよ?」



 初日から紗由理様にご迷惑を掛けてしまいましたね。これでは従者失格というモノです。



「そういえば心雪、墓参り行っておるのか?」

「いいえ、紗由理様に湊二郎様が16になるまでは来るなと言いつけられてますから」

「……今年か」



 私は紗由理様のお墓を見ても涙を堪えられるでしょうか? 不安ですね……でも考えても仕方ないので別のことを考えることにしましょう。

 そういえば柚葉ちゃんはどうなんでしょうか?



「柚葉ちゃんの方はどうなんですか? 多久郎さんで二代目でしたよね?」

「そうじゃな。妾は世代交代しておるから毎日会えるしな。特に寂しくは思わん」



 そうでしたね。柚葉ちゃんの仕えていた人はまだご存命してましたね。本当に羨ましいです。



「心雪のところほど複雑な事情を持つ家庭はないじゃろ? 湊二郎殿の両親はどうなんじゃ?」

「あの方たちは未だにという感じですね」

「そうか。相変わらずじゃの」



 湊二郎様の夫妻様は都会で過ごしてますが、詳しい住所や居場所などは聞いたこともありません。

 けれど毎月仕送りをして戴いているので、まだご存命ではあるようです。



「1度ぐらい顔を合わせに来て欲しいものですが、あちらにも事情があるのでしょう。そろそろお昼に致しましょう」

「そうじゃな。頼んだぞ」



 柚葉ちゃんも手伝ってくれてもよろしいのですが、相変わらず自分のこと以外はやろうとしませんね。昨日の残り物で良いでしょう。

 私は冷蔵庫から漬け物や昨晩の残り物を取り出して食卓に並べていきます。



「冷蔵庫とはこれまた随分豪勢なものを持っておるな」

「太陽暦1990年ぐらいのモノなので結構古いモノですよ」

「あるだけ良いではないか。妾のところじゃ川で保冷しておるぞ」



 冷蔵庫は掃除機や洗濯機などが存在していたと言われる古代文明で【三種の神器】と呼ばれていたモノの1つです。古代文明での量産が多かった為か、たまに市場などで売ってますが、その汎用性から古いモノでもかなりお高い値段になってます。



「古代文明が便利なのは良いのじゃが、少し怠け過ぎてしまうかもしれんな」

「そうですね……。けど、私たちがソレを言います?」

「確かに使用人というのは古代文明よりも人を怠けさせておるな」



 そんな話をしながらご飯をよそい、テーブルに運ぶと柚葉ちゃんのお腹が鳴る音が聞こえてきました。



「ふふっ、変わりませんね」

「……お主もな」

「さて、食べましょうか。いただきます」

「いただきます」



 私と柚葉ちゃんはお昼ごはんを食べ始めたのでした。


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