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第四話 本当にどうしようもない人ですね。


 翌朝、目を覚ますと私がお布団の中で湊二郎様に抱きついていてとても慌てましたが、今日は湊二郎様も休日なので寝ている湊二郎様の頭を撫でながら湊二郎様が起きるのを待つことにしました。



「心雪、朝飯は……?」



 私は声が聞こえた方を見ると襖を全開にして部屋に入ってきた柚葉ちゃんがいました。



「柚葉ちゃん、人の部屋に入る時はなにか合図ぐらいしてください」

「妾と心雪の仲じゃ。これぐらい許せ。それで朝飯は?」



 私が冷たい視線を向けて言いますが、柚葉ちゃんは当たり前だと言わんばかりの表情(かお)をしていました。

 柚葉ちゃんは昔っからなにも変わってませんね。まあ、私としても変わってない方が接しやすいのでありがたいのですが……



「これから作りますよ。湊二郎様、少し離れますね」



 私はお布団から抜け出し、とりあえず朝食の準備を済ませました。朝食はスクランブルエッグと昨日の残りの焦げた味噌汁です。



「私はお風呂に行ってくるので湊二郎様が来たら先に食べるよう言ってください」

「おお、わかったぞ」



 この街は温泉地帯なので掘れば大抵の場所で温泉が出てきます。人口が少ないので多少掘る分には問題ありません。そういうわけで作られた温泉がこちらの温泉です。


 夜空が見えるようにしつつ、雨などを避ける屋根を取りつけたり、色々小細工をして温泉が濁らならないように設計されてます。



「やっぱり温泉は気持ちいいです」

「にゃーにゃー」



 この街に住む猫さんたちが私の近くに寄ってきました。

 街の猫さんたちは私と同じ変わり者でスゴく温泉を好みます。なので湊二郎様は猫さんたちが溺れないようにと猫さんたち専用の温泉を横に作ったのです。

 さすがは湊二郎様ですね。まだお若いのに温泉まで作れるとは!



「どうしました?」

「(長老がお呼びです。どうか来てくださいまし)」

「……あとで行きますね」



 長老の用事なんて大したモノではありません。大方ゴミ捨て場に面白いものがあったとか、縄張りに不審者が入ったとか騒いでるぐらいでしょう。夕食のお買い物ついでに寄るとしましょう。


 私はある程度の時間を温泉に浸かって過ごした後、いつもの着物を着付けて居間に向かいました。

 すると湊二郎様がテーブルの前に座り、朝食を食べずに私を待っていました。



「湊二郎さま……」

「早く準備しろ。俺は心雪と一緒じゃないと落ち着かないんだ」



 湊二郎様はまたそんなことを平然と言って……



「まったく、湊二郎様は本当にどうしようもない人ですね」



 私はたった一言。それだけを言って朝食をテーブルの上に置いて座りました。

 すると湊二郎様は私の顔をジッと見つめてきました。ちょっと恥ずかしいです……!



「なにか御用ですか?」

「ああ、いや。なんでもない。冷めるうちに食べるぞ」

「はいっ、そうですねっ」



 私と湊二郎様は箸を手に持ち、朝食を食べ始めたのでした。


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