第十八話 湊二郎様のご両親ですっ!(2)
姉様と俊太郎様を連れて家へと戻った私は居間に向かうと湊二郎様が本を読んで座っていました。
「湊二郎さまっ、こちらは湊二郎様のご両親です」
「湊二郎、大きくなったな」
私は姉様と俊太郎様を湊二郎様と向かい合う形で座らせ、お二人にお茶を出してから夕食を作る準備をしました。
今は親子で話すべき時間です。私が出る幕ではありませんね。まずはご飯から作りましょう。
私は着物を紐で縛り、お米を磨ぎ始めます。
「悪かったな湊二郎。俺も研究が忙しくてな」
「研究?」
盗み聞きみたいな形になってしまいましたが、俊太郎様は研究者でほぼ研究所に泊まり込み状態で湊二郎様に会いに来ることができなかったらしいです。
それから湊二郎様と俊太郎様は軽いお話をされて徐々に打ち解けていきました。
「がはっはっはっはっ! さすが俺の息子だ!」
「親父もよく言うな!」
夕食を食べる頃には湊二郎様と俊太郎様は肩を組んで、まるでお酒に酔ってるかのように思えるほど仲良くなってました。
いくらなんでも打ち解け過ぎです。ここまで来ると少し寂しいです……
「何? 妬いたの?」
「妬いてなんかいませんよ。ただ、私が育てたこの16年間が無かったかのように感じてしまっただけです……」
「そう……」
私がそんな考えに浸っていると姉様は私の取り皿をジッと見つめてきました。
「野菜、まだ食べれないの?」
「折角の雰囲気を壊さないでください」
夕食を食べ終え、私は食器を洗ってから姉様と温泉に入りました。
なんか姉様のお胸が大きくなったような気がするのですが……
「どうしたの? 羨ましい?」
「そんなの『まな板』の上にこんにゃくを乗せただけじゃないですか」
まあ、それでも羨ましいですけど……
「ねえ心雪、アナタに取っての湊二郎ってなに?」
「私に取っての湊二郎様ですか?」
私は湊二郎様について考えるとすらすらと出てきたので、そのまま口にしました。
「湊二郎様は不器用ですけどカッコよくて、こんな無理やり勝手にキスした私でも受け入れてくれるとても優しい方で、一緒にいるととても楽しいです。もし可能なら、ずっと一緒に居たいです……」
私はそんなことを言った直後に自分がかなり恥ずかしいことを言ってしまったと気づいてしまい、温泉の中に顔を浸けてぶくぶくと泡を立てました。
「湊二郎はどう思ってるのかしらね?」
姉様の言葉を聞いた瞬間、私は大切なことを思い出しました。
私は立ち上がって姉様に言いました。
「姉様ッ! 湊二郎様が巨乳にたぶらかされてるんですっ! このままでは湊二郎様がっ!」
「きょッ!? 巨乳ですってッ!?」
さすがは姉妹というべきなのか、巨乳に対する考えは姉様も私と同じようです。
私にとって巨乳とは悪なのです。巨乳を見る度に感じる謎の敗北感。私はあれが堪らなく嫌なのです。
「湊二郎に言ってやらないとッ! 心雪、来なさいっ!」
姉様は温泉から上がると私の手を掴んで家へと走って行くのでした。
「えっ!? ちょっと姉様ッ!? 羽織る物を! せめて羽織る物だけでもッ!!」
なんとか身体を隠すための布を取り、身体に巻きました。
そして私は湊二郎様に、姉様は俊太郎様に正座させられ、怒られたのでした。
「「もうしませんので許してください……」」
「「捨てられた猫みたいな顔をするなッ!」」
それぞれのペアで台詞が重なりました。
さすがは親子と姉妹ですね。ここまでハモるとは驚きました。
その夜、布団が二枚しかないことに気づいてしまい、湊二郎様の真横で心臓がドキドキと波打った状態で眠った私でした。